【ウクライナ戦争】ロシアによるウクライナ侵攻の背景

2022年2月24日、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始しました。

その原因・背景を考える際の参考として、以下の論考とドキュメント番組を紹介します。

ロシアによるウクライナ侵攻の背景を見る3つの論考

ジョン・ミアシャイマー「悪いのはロシアではなく欧米だプーチンを挑発した欧米のリベラルな幻想」(フォーリン・アフェアーズ・リポート 2014年9月号)

原題は「Why the Ukraine Crisis Is the West’s Fault: The Liberal Delusions That Provoked Putin」。

シカゴ大学の教授であるミアシャイマーは「米ロは異なるプレーブックを用いて行動している」と述べています(引用中の太字は当ブログ運営人による)。

  • ……、ロシアの高官たちはワシントンに対してこれまで何度も、グルジアやウクライナを反ロシアの国に作り替えることも、NATOを拡大させるのも受け入れられないと伝えてきたし、ロシアが本気であることは2008年にロシア・グルジア戦争で立証されていた。
  • 本質的に、米ロは異なるプレーブックを用いて行動している。プーチンと彼の同胞たちがリアリストの分析に即して考え、行動しているのに対して、欧米の指導者たちは、国際政治に関するリベラルなビジョンを前提に考え、行動している。
  • その結果、アメリカとその同盟諸国は無意識のうちに相手を挑発し、ウクライナにおける大きな危機を招き入れてしまった。(注:「ウクライナにおける大きな危機」とは、この論考発表当時の、2014年のロシアによるクリミア併合をめぐる一連の状況のことです)

マイケル・キメージ/マイケル・コフマン「ロシアとウクライナの紛争リスク―キエフの親欧米路線とロシアの立場」(フォーリン・アフェアーズ・リポート 2022年1月号)

原題は「Russia Won’t Let Ukraine Go Without a Fight: Moscow Threatens War to Reverse Kyiv’s Pro-Western Drift)」。

アメリカ・カトリック大学の歴史学教授であるキメージと新アメリカ安全保障センター・シニアフェローのコフマンはこの論考において、今回のロシアによるウクライナへの軍事侵攻のリスクについて次のように予見していました(引用中の太字は当ブログ運営人による)。

  • …ワシントンは中国との競争に関心と資源をシフトさせているために、プーチンは「ウクライナはアメリカにとって周辺的な関心事にすぎない」と確信しているのかもしれない
  • ロシアの指導者たちは、(国境地帯に戦力を動員することで)外交にはもはや乗り気ではなく、ウクライナがアメリカや北大西洋条約機構(NATO)との関係を強化する路線を模索するのは看過できないと考えていることを示唆している。
  • つまり、モスクワ、ワシントン、キエフが平和的な解決策を見出せない限り、モスクワが武力によって現在の均衡をリセットする環境が整いつつある。

ティモシー・フライ「Putin’s War at Home: How Conflict in Ukraine Complicates His Balancing Act」(Foreign Affairs(英語版)のウェブサイト2022年2月26日付)

英文の原題を訳せば「(ロシア国内におけるプーチンの戦い:ウクライナ紛争がもたらす国内のバランス統治の複雑化」。

コロンビア大学教授のフライはプーチンのロシア国内における立ち位置や、彼を取り巻くロシア国内の政治・経済状況と今回のウクライナへの軍事侵攻の関係について次のように考察しています(引用中の太字は当ブログ運営人による)。

  • ロシア大統領ウラジミール・プーチンの最大の眼目は、ロシアにおける混乱したポスト冷戦初期を経た後の安定を構築することである。しかし、今度のウクライナへの大規模な侵攻の開始によって、プーチンはこうした安定化にリスクをもたらした。
  • 秩序と統制を維持するためにロシア国内の多くの競合する利益のバランスを取ることは、これまで決して容易なことではなかった
  • しかし、国民の意見を分断し、国内のエリートたちの経済的な懐を締めつけることになりかねない今回の紛争のもとでは、そうしたバランスを取る統治を行うことは、さらに困難になるだろう
  • 2014年のクリミア併合(とそれ以前のロシアの経済成長)の輝きが薄れる中で、プーチンは彼の役割を正当化する物語を見出すことに苦慮してきた。
  • 停滞する経済、コロナ感染症のパンデミックへの対応のまずさ、腐敗、そして国民の間でのプーチン支持への翳りが合わさり、ロシアを統治する彼の手段は鈍ってきた。
  • したがって、プーチンは権力を維持するためにセキュリティ部門にさらに大きく依存し、国内でのさらに強力な抑圧と国外でのさらなる好戦的な姿勢という危険な手段を取るようになっている。
  • ウクライナへの侵攻は、このような手段から生じ、それを強めているが、このことにより、プーチンは一層、彼の攻撃的姿勢を支える軍部への依存へと傾いているのだ。

プーチンの米国に対する「怨嗟」が窺えるドキュメント

FRONTLINE「PUTIN’S REVENGE」(PART1:2017年10月25日/PART2:同11月1日)

英文のタイトルを訳すと「プーチンの復讐」。

今回の軍事侵攻とプーチン自身の政治姿勢の関係に目を向けてみると、彼が抱く西側とりわけ米国に対する「不満」や「怨嗟」の感情を窺うこともできそうです。

このドキュメント番組はウクライナ問題を直接扱ったものではありませんが、プーチンのそうした感情の一端を知ることができます(特にPART 1)。※ドキュメントはこちらで視聴できます。

ということで、関心を持たれた方は直接論考・ドキュメントにあたってみてください。

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