【アフガニスタン】タリバン、アルカイダ、ISISの関係

タリバン、アルカイダ、ISISのわかりにくい関係

アフガニスタンでは、2021年8月にスンニ派のイスラム主義勢力タリバンが権力を掌握後、同じくスンニ派でイスラム教過激派組織であるISIS(イスラム国、イスラミックステート、IS、ISILなどとも呼ばれます)によるテロや攻撃が繰り返されています。

一方、これまたスンニ派でイスラム原理主義の国際テロ組織アルカイダについては、タリバンとの関係が続いているものの、現在のタリバンは、アルカイダによる国際的なテロ活動を支持する動機が弱いと言われています(当ブログ「アフガニスタンは再びテロリストの温床になるか」参照)。

現在のアフガンにおけるタリバン、アルカイダ、ISISの関係は今一つわかりづらいと思いませんか?

そんな疑問を整理し、理解を助けてくれているのがスタンフォード大学フーバー研究所フェローで、ブログ「ジハディカ(Jihadica)」のエディターであるコール・ブンゼル氏の「Al Qaeda Versus ISIS: The Jihadi Power Struggle in the Taliban’s Afghanistan」という論考です。(フォーリン・アフェアーズ(英語版)のウェブサイトに2021年9月14日付で掲載されています)

ありがたいことに、フォーリン・アフェアーズ・ジャパンのウェブサイトに、その論考の邦訳版「アルカイダ対イスラム国―アフガンにおける権力闘争」が掲載されています。

購読者限定の記事なので詳しい紹介は避けますが、論考のポイントの一端は次のような点です。

タリバンの権力掌握を評価するアルカイダ、反発を強めるISIS

・2013年以降、ISISが台頭すると、アルカイダは穏健で現実的な組織として自らを位置づけることを試みた。他のイスラム教徒を不信仰者と判断する背教徒宣告を出すのも控えた。タリバンとの緊密な関係も深めた。

・したがって、今回のタリバンの勝利は、アルカイダにとって異教徒の打倒とイスラム教徒の勝利による神の約束を意味している。

・一方、ISISは、2020年のアメリカとタリバンの撤退合意を、ISISに対する共謀をはかる十字軍と背教徒の同盟とみなした。

・したがって、今回のタリバンの勝利も、ISISにとってはアメリカとタリバンの同盟を示すさらなる証拠にすぎない。

・タリバンがアフガンを統治するには、厳格な原則の順守と、統治を維持していくための現実的な譲歩とのバランスが必要になる。

ということで、タリバンとの関係を維持してきたアルカイダが今回のタリバンによる権力掌握を好意的に受け止める一方で、ISISはこれを批判し、テロや攻撃を繰り返しているということになります。

追記(2021年11月6日)

『フォーリン・アフェアーズ・リポート 2021 No.11』 に上記論考の翻訳「アルカイダ対イスラム国―アフガンにおける権力闘争」が掲載されています。

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