【CPTPP/アメリカ外交】中国のCPTPP加盟申請をめぐって

2021年9月16日、中国がCPTPPへの加盟を申請したことは驚きをもって大きく報じられました。

当ブログでもこの間、5回にわたってメディアや専門家の反応などを紹介してきました。

それらの記事を読みやすくするため、また今後の参考資料にもなるよう、1つにまとめ直しました。

目次

CPTPPとは

2018年12月30日に発効した経済連携協定です。現在、オーストラリア、カナダ、シンガポール、チリ、日本、ニュージーランド、ブルネイ、ベトナム、ペルー、マレーシア、メキシコの11か国が加盟しています。

・正式名称は、Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)です。

・CPTPP はTPP(Trans-Pacific Partnership Agreement、環太平洋パートナーシップ協定)が米国の離脱の影響を受けて発効を見なかった後に、TPPの交渉に参加していた米国を除く11か国によって成立したものです。このため、CPTPPTPP11とも呼ばれています。

・CPTPPの発効後、英国が2021年2月1日に加盟を申請し、同年9月16日に中国が、さらに同年9月22日に台湾が加盟を申請しています。(※追記)

※追記(2024年7月21日)
加盟申請については、上記に加え、エクアドル(2021年12月)、コスタリカ(2022年8月)、ウルグアイ(2022年12月)、ウクライナ(2023年5月)がそれぞれ申請を行っています。なお、英国の加盟申請は2023年7月16日に正式に承認されています。

中国の加盟申請をめぐるニューヨーク・タイムズの論調

以下は、ニューヨーク・タイムズのコラムニストであるトーマス L. フリードマン氏による2021年9月16日付のオピニオン記事「China’s Leaders Are Having Fun With Us. Who Can Blame Them?」を抄訳してまとめたものです。

・太平洋における最近のニュースを知れば、中国の習主席にはユーモアのセンスがないとは言っていられない。

・中国は先週、TPPへの加入を申請した。この経済連携協定は、もとはといえば、太平洋地域における中国の経済パワーに対抗するためにオバマ政権下で交渉が進められたものだった。

・したがって、今回の中国政府の加盟申請は、米国が中国の「一帯一路」のメンバーになることを申し込むことや、ロシアがNAFTA(北米自由貿易協定)の加盟国になることを申し込むような、一見、愉快ないたずらのような策略だ。

・しかし、この策略は、中国に対する米国の外交政策の弱点を見せつけ、貿易と外交における国際ルールの設定において、米国の優位性に対抗するものだ。

・中国の加盟申請は、アジア太平洋地域における中国の海軍力増強に対抗するためにオーストラリアに原子力潜水艦を導入することを英国、米国、オーストラリアが表明した後のことであった。

・米国にとって必要なのは、原子力潜水艦で中国を囲い込む戦略ではなく、中国の行動を変える戦略であり、TPPにはもともとその意図もあった。

・オバマ政権下のTPPの設計者の間では、中国はTPPの構想から排除されてはいなかった(※)。中国がTPPへの加盟を希望するなら、ルールに従う必要があるというのがメッセージであった。

・中国の改革者たちは、これを中国システムの開放に役立てられると見ていたし、同国の強硬派にとってみれば、原子力潜水艦以上の脅威であった。

・しかし、中国はこう考えたのだ。「巨大な市場へのアクセスを売りにして、米国のルールの代わりに中国にとって都合のよい条件でTPPを乗っ取ってやろう。そうすれば、米国とオーストラリアの潜水艦協定に対抗できる」

・これは、すばらしい思いつきだった。ウォールストリート・ジャーナルは先週金曜日にこう述べた。「10年前、TPPは中国の経済モデルの影響を抑え込むために米国によってつくられた。今は、米国がTPPの外にあり、中国が中に入りたがっている」

・中国のCPTPPへの加盟申請がすぐに認められることはないだろうが、中国の今回の行動を通じて、米国の極左と極右が中国に関していかに真剣でないかが明らかになった。

・米国の極左も極右も中国の人権問題を激しく非難する一方で、TPPのような透明性と法の支配へと中国を促す効果的な手段を阻害しているのだ。

・中国の今回の加盟申請については「中国の改革者たちは、オリジナルのTPPの交渉過程を注視し、中国がTPPに加入することで、国内の改革につなげられると期待していた。しかし、それは過去のことになった。中国は今や、巨大市場の魅力を押し出し、CPTPPの条件の一部に適合し、その他の部分はあいまいにしながら、CPTPPへの加盟を画策し、中国と共存するようCPTPPの加盟国を誘い込む可能性がある」。

・このようなばかげた事態は、トランプがTPPの意図するところを理解せずに交渉からの離脱を宣言し、これを台無しにしてしまったことにあった。

・さらに、トランプの愚かさを支えたのは、バーニー・サンダースと彼の仲間の進歩派らの、経済連携協定へのお決まりの反対論による、TPP離脱への暗黙の支持だった。

・米国がTPPに戻るのは今からでも遅くない。厳格なルールを主張することで、TPPを強化することもできる。

・これから数年のうちに潜水艦を配備することよりも、米国が今日にもTPPに参加することを支持する。米国がTPPへの不参加を続けるならば、CPTPPの略称は変わらずとも、それは「Chinese People’s Trans-Pacific Partnership」になってしまうだろう。

・それは笑いごとではすまされない…。

※「中国はTPPの構想から排除されてはいなかった」という点について
オバマ政権下で東アジア・太平洋担当国務次官補としてTPPの交渉に関わったカート M. キャンベル氏(現在、バイデン政権のインド太平洋調整官)が著書 Pivot: The Future of American Statecraft in Asia (2016) の中で次のように述べています。

「米国はTPPを批准すべきだ。なぜなら、アジア太平洋地域は、米国の繁栄にとって中核となる地域であり、西側のルールによって世界経済は定義されなければならない。米国はTPPを批准した後、中国がこの協定を受け入れ、最終的に加盟するよう促すべきだ。さらには、TPPに関心を示している台湾、韓国、フィリピンの加盟についても支援すべきだ」(p. 269)。

ブルッキングス研究所の論調

米ブルッキングス研究所のウェブサイトに、同研究所の東アジア政策研究者であるミレヤ・ソリース氏の論考「China moves to join the CPTPP, but don’t expect a fast pass」が掲載されています(2021年9月23日付)。

ソリ-ス氏の主張をごく簡潔にまとめると次のようになります。

・貿易と投資に関わるCPTPPの高度な規定と中国の現状には大きな隔たりがある。

・また、CPTPP加盟国と中国の間にはいくつもの政治・外交問題も存在する。

・したがって、中国のCPTPPへの加盟が迅速に進展することはない。

・しかし、だからといって今回の中国の行動が誤りであるとは言えない。アジア太平洋地域の経済的統合の大きな動きにおいて米国の存在感が薄れてきている。

米通商代表部の元高官の論調

「フォーリン・アフェアーズ・リポート(2021年 No.10)」に、アジアソサエティ政策研究所の副会長で米通商代表部次席代表代行(2013-2015)を務めたウェンディ・カトラー氏の「環太平洋パートナーシップへの復帰を―CPTPPのアメリカにとっての価値」と題する論考が掲載されています。

論考は、中国のCPTPPへの加盟申請以前に書かれたものですが、執筆時点において中国の加盟申請をも見据えた内容となっています。

以下、そのポイントを要約して紹介します。

・バイデン政権は中国との競争、アメリカ経済、ワシントンの世界的影響力にとって大きな価値をもつ環太平洋パートナーシップ協定への復帰を試みるべきだ。

・CPTPPやRCEP(※)に見られるように、アジア諸国は貿易を外交の優先課題とし、アメリカの参加の有無にかかわらず、貿易の拡大を模索している。そうした中で、中国経済の引力は大きい。

・日本、韓国、ほとんどのASEAN諸国にとって中国は最大の市場だ。2021年には、中国はインドにとっても最大の貿易相手国になると予想されている。中国は2020年に外国直接投資を最も引きつけた国でもあった。

・また、中国経済はグローバルなサプライチェーンにおいても重要な役割を担っており、これは他国にとって大きなリスクともなる。

・こうした中で、中国の習近平主席は、すでに2020年11月の段階でCPTPPへの加盟を前向きに考えていると述べていた(ブログ管理人注:冒頭で紹介したように、中国は2021年9月16日にCPTPPへの加盟を申請した)。

・アジア太平洋地域のこうした動向は、バイデン政権の外交の優先課題である中国への対抗にとって複雑な影響を与えることになり、同地域でのアメリカの経済的影響力を取り戻すうえでも大きな影響を与える。

・5年前にアメリカはTPP交渉参加国を置き去りにして離脱した。したがって、CPTPP加盟に向けた交渉においては、アメリカはゲートキーパーではない。米議会の説得も簡単にはいかない。

・それでも、CPTPPへの参加の選択肢を残しておくべきだ。世界におけるアメリカの信頼と影響力の回復をめざし、中国との競争を展開するうえで、傍流に身を置き、他国に世界経済の未来を形作らせる余裕はアメリカにはない。

RCEPについて
正式名称は、Regional Comprehensive Economic Partnership(地域的な包括的経済連携協定)。協定は2020年11月15日に署名されました。しかし、まだ発効されていません。2022年の発効がめざされています。(※追記)

参加国は、ASEAN10か国(インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオス)に加えて、オーストラリア、韓国、中国、日本、ニュージーランドの計15か国です。

RCEPの概要については、次の記述が簡潔でわかりやすいと思います。(以下、『EPAビジネス実務検定受験の指針 ベーシック版(C級)第2版 2021年』MHJ出版 p.61より抜粋)

・2012年11月に交渉が立ち上げられ、インドが交渉から離脱するも、15か国での合意に至った。世界の人口、GDP及び貿易輸出総額のそれぞれ3割を占めるEPA(経済連携協定)である。

・当該地域の貿易・投資の促進及びサプライチェーンの効率化に向け、市場アクセスを改善し、多様な国家間での知的財産及び電子商取引等の幅広い分野のルールを整備している。

・物品貿易のほか、投資関連についても規定がなされ、日本企業の海外展開における法的安定性や、予見可能性が高まることが期待される。

・投資の分野では、投資企業への技術移転要求を禁止した。

・なお、交渉から離脱したインドについては、いつでも加入できることを特別に規定している。

※追記(2024年7月21日)
RCEPは2022年1月1日、日本、ブルネイ、カンボジア、ラオス、シンガポール、タイ、 ベトナム、オーストラリア、中国、ニュージーランドの10か国について発効しています 。また、韓国については2月1日に発効し、マレーシアについては3月18日に発効しています。

専門家の論調

同じく「フォーリン・アフェアーズ・リポート(2021年No.10)」に掲載されている、アメリカンエンタープライズ研究所リサーチフェローのザック・クーパー氏とインディアナ大学准教授のアダム・P・リフ氏による「今度こそアジアシフト戦略を―経済・安全保障エンゲージメント」と題する論考の要旨を以下に紹介します。

・バラク・オバマがアジアリバランシング戦略を表明して10年。現状は「野心的なレトリックと控えめな行動間のギャップが作り出した不安と懸念」でしかない。今後、3つのポイントが重要になる。

・1つには、アジアへの関与を中国への対応枠組みの一部としてではなく、前向きなアジェンダ、地域戦略ととらえること。

・2つめに、アメリカが離脱した後に成立したTPPをベースとする「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)」の参加に向けて交渉を再開すること。

・3つめに、中東での軍事プレゼンスを削減してアジアでの抑止力を強化することだ。特にアジアの同盟国やパートナーと協力して力強い拒否的抑止戦略を考案し、北京に対して武力行使ではアジアでの目標は達成できないと納得させる必要がある。

以下、上記2つめのポイントに関連して

・アジア経済統合路線からワシントンが離脱したことで、アメリカの立場は損なわれ、安定した地域秩序を形作り、促進する能力も妨げられている。

・不完全だとはいえ、TPPをベースとする環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)への参加に向けて交渉を再開する以外、現実的な代替手段はない。

・イギリスでさえ、自国の「アジアシフト」の一環としてCPTPPに参加する意向を表明している。

・10年前、オバマ政権はTPPをアジア経済への関与の試金石にした。バイデン政権がアメリカの市民と議会をCPTPPへの参加に向けて説得できなければ、アジアの多くの人々、特に中国経済への依存を高めている新興国は、バイデン政権の「アメリカ・イズ・バックの主張は本当か」と疑うことになるだろう。

サウス・チャイナ・モーニング・ポストの論調

サウス・チャイナ・モーニング・ポストに掲載されている、中国商務部国際貿易経済合作研究院のシニアフェローでチャイナ・フォーラムの専門家であるZhou Mi氏と、同フォーラムの準会員であるLee Jersey Wang氏によるオピニオン記事「China’s CPTPP bid underlines its commitment to trade and reform(中国のCPTPPへの加盟申請は貿易と改革への努力を明確に示している)」(2021年9月29日付)の主張を抄訳して紹介します。

・CPTPPへの中国の加盟申請は、中国が国際的に開かれており、国内においては経済の水準を向上させることを意図するものだ。

・CPTPPは2018年に11か国によって署名されたが、署名した国々による批准のスピードは遅い(※ブログ管理人注:CPTPPに署名している11か国のうち、2021年10月8日現在、日本を含む8か国が批准しています)。

・その理由の1つが、CPTPPは関税のような貿易の障壁を取り除くだけでなく、各国の経済の水準を引き上げることで相互の市場へのアクセスを大幅に拡大しようとするものだからだ。

・CPTPPにおいては、加盟国が協定に違反した場合に強制力をもつ仲裁機関が設置され、各国の主権は制限されるが、その犠牲と引き換えに、市場へのアクセスにおいて加盟国間で同じ土俵を得られる。

・CPTPPは従来の協定が避けてきた課題であるところの知的財産、労働、国営企業、環境・社会・ガバナンス(ESG)、そして加盟国への投資の基準の設定に取り組む。このことにより、加盟国は公正な条件の下での貿易が可能となる。

・こうしたCPTPPの特徴を踏まえると、中国がこの協定へ加盟申請を行ったことは重要な意味をもつ。

・高い政治的・経済的な壁があるために、実際に中国がCPTPPに加盟するかどうかは不確かだが、今回の加盟申請は、世界と中国社会の両方に強力なメッセージを伝えるものだ。

・世界に対しては、中国がさらなる国際的な経済協力に向けて開かれた姿勢をもっていることを示したことだ。

・中国はすでに、ASEAN10か国・オーストラリア・韓国・中国・日本・ニュージーランドとの間での地域的な包括的経済連携協定(RCEP)に署名している。

・だが、中国はRCEPのような関税の障壁をなくそうとする従来の経済連携協定にとどまらず、さらなる国際的な経済統合の進展に向けた強い意欲をもっている(※)。CPTPPへの加盟申請はその表明である。

※ブログ管理人注
RCEPはCPTPPのように広範な領域での高度な規定をもちませんが、必ずしも関税障壁の撤廃に特化したものではありません。上記「元米通商代表部高官の論調」の項の「※RCEPについて」をご参照ください。

・中国国内へのメッセージは、政府が国内経済の質と水準を向上させる決意を示してきたということだ。かつての中国は貧しく、経済成長と国民に食料を保障することが最重要であった。しかし、貧困との戦いに勝利した政府は、マズローの欲求段階説が示すところの次の段階へと進むことができた。

・2014年からは単なる経済成長ではなく、繁栄と幸福をめざす諸施策に目を向けた。その最初の主要なステップはスモッグとの戦いを宣言したことだったが、ここ2年の間には、広範な分野で進歩的な動きが展開されてきた。それは、20世紀初頭のアメリカにおける進歩主義の進展のようだ。

・進歩的な動きの最も顕著な例には、2060年までにカーボンニュートラルを実現するという約束、独占企業への対処、家庭や学生、その他の人々をとりまく過大な困難への対処が挙げられる。

・こうした動きは、CPTPP加盟への準備や他の国際的な合意によってもたらされたものではない。他の国の政府と同様に、中国政府もまた、国民への責任を負っており、国民の幸福と繁栄を求めているのだ。

・この目的は、加盟国である11か国の経済と市場に公正かつ相互にアクセスできるCPTPPに参加することでより効果的に到達されうるが、国民の幸福と繁栄は、それに関係なく追及されるものだ。

・しかしながら、中国にはCPTPP加盟への課題がある。それは、透明性への要求、知的財産の保護、労働者の権利、国営企業の基準、そして外国からの圧力にある程度従うことだ。

・改革に向けた厳しい現実にもかかわらず、中国はCPTPP加盟に向けたこうした課題を、必要な調整のための意欲を示し、外国からの要求を不公正な圧力とは見做さずに国際社会での責任ある生産的なメンバーとして自らを証明する機会として捉えている。

・中国は課題への途上にある。常に反対する立場にあるのではなく、中国は自らを向上させ、可能なかぎり多くの人々の利益となる国際的なシステムの構築に貢献するダイナミックなパワーなのだ。

バイデン政権のスタンスは?

これまで見てきたように、CPTPPへの中国の加盟申請の衝撃やアジア太平洋地域での経済統合の動きにおいて米国の関与が低下していることについて、アメリカのメディアや専門家の間には危機感が広がっているようです。

一方で、サウス・チャイナ・モーニング・ポストが主張するように、中国にとっては、自らの「改革努力」を国内外に示す機会と捉える向きもあります。

では、バイデン政権自体は、CPTPPについてどんなスタンスをとっているのでしょうか。

オンラインの「ザ・ディプロマット」誌に掲載されている「Wendy Cutler on China, Taiwan, and the CPTPP(ウェンディ・カトラーに聞く―中国、台湾、CPTPP」(2021年10月5日付)というインタビュー記事の中から、バイデン政権のスタンスに関わる部分を抜き出してみます。

なお、ウェンディ・カトラー氏は、アジア社会政策研究所(ASPI)の副代表で、米通商代表部の臨時代理としてTPP交渉や他の貿易交渉に関わった経歴をもたれています。聞き手は、同誌の編集長であるシャノン・タージィー氏(Shannon Tiezzi)です。

シャノン・タージィー:
バイデン政権はCPTPPに戻ることに関心を示していますか?米国の政治的状況を踏まえた場合、そのような動きは可能なのでしょうか?

ウェンディ・カトラー:
CPTPP加盟国は協定への米国の復帰を歓迎するでしょうが、バイデン政権は復帰に関心を示していません。バイデン大統領は、米国内の経済対策によってアメリカ経済の強化と耐性を立て直すまで、貿易協定には取り組まないことを明らかにしています。

CPTPPに関して、バイデン大統領は完全に道を閉ざしているわけではありません。大統領は、協定の大幅な改定や、労働と環境保護に関わる関係者を協定交渉のテーブルに加えることの必要性について語っています。

大統領に続いて、米国通商代表のキャサリン・タイ氏も、CPTPPに関して、国際的な貿易環境における近年の進展を反映していない時代遅れの条項があると指摘し、距離を置いています。(※)

CPTPPへの参加について、連邦議会や関係者の間にはこれを支持する声もありますが、反対意見は依然として大きく、米国でCPTPPの議論を再燃させることは危険です。

※キャサリン・タイ氏は2021年10月4日の戦略国際問題研究所(CSIS)での講演会と対談で、「CPTPPへの中国の加盟申請についてバイデン政権はどう対処するか? 米国はCPTPPに参加する計画があるか? 米国は中国のCPTPPへの参加を阻止するか?」と問われています。

これに対しタイ氏は「中国がCPTPPに加盟申請したのは1、2週間前のことだ。米国は長期にわたってインド太平洋地域との関係を築き、投資してきた。インド太平洋地域では、地政学的に競争的な圧力が強くかかっている。この間に世界経済に起こっている現実に注意を払い、インド太平洋地域の同盟国やパートナー国との関係を引き続き深め、現実と課題に取り組んでいく必要がある」と述べています。
A Conversation with Ambassador Katherine Tai, U.S. Trade Representative Monday, October 4, 2021 10:00 am – 11:00 am CSIS Headquarters and Online Livestream)

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