バイデン大統領は2021年4月14日(米国東部時間)、米軍が5月1日を起点とし、遅くとも9月11日までに、アフガニスタンから完全に撤退することを公式に表明しました。
演説の映像はこちらから
終わりなき戦争を終わらせる時だ
バイデン大統領は同日午後の国民向けの演説で、
米国は2001年にアフガニスタンへ向かった。アルカイダをせん滅し、アフガニスタンを拠点に計画される米国に対する将来のテロ攻撃を防ぐためだった。我々の目的は明らかだった。その大義は正当であった。
…(略)…米国はそれを実行した。その目標を成し遂げたのだ。
アフガニスタンでの戦争は何世代にもわたって行われるものではなかったのだ。米国は(9.11の)テロ攻撃を受けた。米国は明確な目的と共に(アフガニスタン)での戦争に向かった。米国はその目的を達した。ビン・ラディンは死に、アルカイダはイラクで、そしてアフガニスタンで力を失った。終わりなき戦争を終わらせる時だ。
と述べ、アフガン戦争の目的とその成果を強調すると共に、この20年間の戦いで命を落とした2,448名の米軍兵士、20,722名の負傷した兵士の勇気を称え、戦争に関わったすべての米軍兵士とその家族に向けて敬意を表しました。
撤退が米国の信頼と影響力を傷つけることはない
16分に及ぶ演説のうち、後半の次の件が印象に残りましたので紹介します。
外交は、影響力を持つ米軍の強固なプレゼンスなしには成功しないと、声高く主張する多くの人々がいることを私は知っている。我々はそうした主張を10年も行ってきたのだ。その議論は決して効果を示さなかったではないか。アフガニスタンに9万8000人の兵士を配置した時も、数千の兵士へと削減した時にも。
外交は、米国の軍隊を危険にさらすことに拠りかかるものではない。そのような考えは改めるべきだ。他国における戦争当事者間の交渉の切り札としてアメリカ軍を利用すべきでない。それは、アフガニスタンのアメリカ軍を無期限に維持し続けるための口実に過ぎない。
アフガニスタンでの戦いに留まるべきだと主張する多くの人々がいることも私は知っている。撤退はアメリカへの信頼を傷つけ、世界におけるアメリカの影響力を弱めると言うのだ。その正反対こそが真実だと私は考えている。
ということで、ここでは、米軍兵士を危険にさらす外交戦略や、米軍の存在を前面に押し出すことに対するバイデン大統領の懐疑が表明されているように思います(これは「米国家安全保障戦略の暫定的指針」にも通じます。当ブログ2021年3月17日付「米国家安全保障戦略の指針のポイント(4)」の第33段落を見てください)。
アフガニスタンからの完全撤退が実行されれば、この20年来のアメリカ外交の大きな節目になると思います。
しかし、米軍の撤退とアフガニスタンの情勢をめぐっては多くの懸念や議論も出されており(たとえば、2021年4月14日付のAP通信「US troop pullout will leave behind an uncertain Afghanistan」)、その先行きは必ずしも確かなものとは言えないようです。