米バイデン政権が2022年2月11日にインド太平洋戦略を発表しました。
INDO-PACIFIC STRATEGY OF THE UNITED STATES FEBRUARY 2022 THE WHITE HOUSE WASHINGTON(こちらから)
戦略は本文が15ページあり、次の4つの柱で構成されています。
- Ⅰ. インド太平洋への期待
- Ⅱ. 米国のインド太平洋戦略
- Ⅲ. インド太平洋アクションプラン
- Ⅳ. 結語
バイデン大統領はインド太平洋について次のように述べています。
「米国をはじめ、同盟国とパートナー、そして世界の国々の将来は、今後数十年における自由で開かれたインド太平洋の維持と繁栄にかかっている」(2021年9月24日クアッド(QUAD)首脳会談)
また、インド太平洋については、日本の外交青書に下記のような説明が見られます。
自由で開かれたインド太平洋
Free and Open Indo-Pacific(FOIP)
インド太平洋は、アジア太平洋からインド洋を経て中東・アフリカに至る広大な地域であり、世界人口の半数を擁する世界の活力の中核です。
しかし同時に、インド太平洋は、各国の「力」と「力」が複雑にせめぎ合い、力関係の変化が激しい地域でもあります。
また、海賊、テロ、大量破壊兵器の拡散、自然災害、違法操業といった様々な脅威にも直面しています。
インド太平洋地域において、ルールに基づく国際秩序を構築し、自由貿易や航行の自由、法の支配といった、地域の安定と繁栄を実現する上で欠くことのできない原理・原則を定着させていくこと。
これが、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」という考えの要諦であり、日本は、志を共にする国と連携しつつ、この考えの下での取組を力強く主導しています。
外交青書2020 巻頭特集 自由で開かれたインド太平洋
ということで、この戦略の理解を少しでも深めるために、以下、4つの柱を訳してみたいと思います。
※訳出においては、読みやすさを考慮し、適宜改行しています。また、英語の原文にはない小見出しを付けています。
Ⅰ. インド太平洋への期待
米国とインド太平洋の関係
米国はインド太平洋の大国である。この地域は米国の太平洋岸からインド洋へと至り、世界の人口の半数以上、世界経済の3分の2近く、そして世界における7つの軍事大国を有している。
米国は国内を除き、他のどの地域よりも多くの軍隊をこの地域に展開している。インド太平洋は、300万以上のアメリカの雇用を支え、米国内への外国直接投資は9000憶ドルに及ぶ。
この地域は今後数年で、世界の経済成長の3分の2をけん引することになり、その影響力は高まるばかりである。したがって、この地域の米国にとっての重要性も高まる。
米国とインド太平洋の歴史
米国は長年にわたり、インド太平洋が安全と繁栄にとって重要であることを認識してきた。
インド太平洋との関係は、米国人が商業の機会を求めてこの地域に進出し、またアジアからの米国への移民が増加した2世紀前に築かれた。第2次世界大戦は、アジアが安定することで、我が国も安定しうることを気づかせた。
第2次世界大戦後、米国はオーストラリア、日本、韓国、フィリピン、タイとの間に条約にもとづくしっかりとした同盟関係を結び、この地域との関係を強固なものにしたが、これにより、地域の民主主義が発展する基礎をおくことができた。
米国がこの地域の主要な機構、特に東南アジア諸国連合(ASEAN)を支え、密接な貿易と投資の関係を発展させ、人権から航行の自由に至る国際的な法と規範を支持することに責任を持つことにより、こうした関係は拡大した。
冷戦終結後の米国とインド太平洋
こうした歴史は、インド太平洋における米国の継続的な役割について、戦略的な必要性を強調するものとなっている。
冷戦の終結において、米国はこの地域からの軍の撤退という考えを検討したが、そうはしなかったのは、インド太平洋が21世紀において戦略的価値が増大することを理解していたからである。
以来、民主・共和の両政権はこの地域への関与を維持してきた。ジョージ・W・ブッシュ政権はアジアの重要性の増大を理解し、中国、日本、インドと密接に関わった。
オバマ政権はアメリカのアジア重視を大いに促進し、この地域での新たな外交、経済、軍事の分野に力を注いだ。トランプ政権もまた、インド太平洋が世界をけん引する中心であると認識していた。
バイデン政権の決意
バイデン大統領のもとで、米国はインド太平洋での長期にわたる地位と関与を強化することを決意している。
米国は北東アジアおよび南アジアから南アジアおよび太平洋の島々を含むオセアニアに至る、インド太平洋のすべての地域で力を注ぐ。
米国はヨーロッパを含む多くの同盟国やパートナーがこの地域への関心を強め、また、米国がそうあるべき連邦議会における広範な超党派の合意がなされる中で、インド太平洋への取り組みを進める。
急速に変化する戦略的な情勢の中で、同盟国やパートナーと協力し、インド太平洋にしっかりと根を張り、この地域自体を強化することによってのみ、米国の利益は増進しうると認識している。
インド太平洋での中国の威圧的行動
我々がこのように関心を強めているのは、1つには、インド太平洋がとりわけ中国からの圧力の増大に直面しているという事実にもとづいている。
中国は経済、外交、軍事、技術の力を結合し、インド太平洋での影響力の行使を求めると共に、世界で最も影響力を持つ大国となることを目指している。
中国による威圧と攻撃は全世界に及んでいるが、それはインド太平洋において最も先鋭化している。
オーストラリアへの経済的な威圧から、実効支配の境界に沿ったインドとの紛争、台湾への圧力の増大、東シナ海・南シナ海での近隣諸国に対する嫌がらせまで、インド太平洋における米国の同盟国やパートナーは、中国の有害な行動がもたらす多くの課題を抱えている。
こうした経過において、中国はまた、航行の自由やインド太平洋に安定と繁栄をもたらす他の原則を含め、人権と国際的な法を損なう行動をとっている。
中国との戦略的バランスと協力
今後10年間の我々の集団的な努力によって、インド太平洋と世界に利益をもたらしてきたルールと規範を、中国が転換させることになるかどうかが決まる。
我々の役割は米国内において国力の基盤に投資し、我々の取り組みを同盟国やパートナーの取り組みと連携させ、我々が他国と共有している未来への関心と構想を守るために、中国と対抗することである。
我々は国際的な制度を強化し、共有する価値観のもとにその制度を確立し、21世紀の課題に適合するよう更新する。
我々の目的は中国を変えることではなく、戦略的な環境を作ることであり、これにより、米国や同盟国・パートナーにとって、そしてまた、我々が共有する利益と価値観にとって最も好ましい影響力のバランスを世界に構築することである。
我々はまた、中国との競争を責任を持って管理することを目指す。
我々は同盟国やパートナーと協力する一方、気候変動や核不拡散のような課題において、中国とともに取り組むことを目指す。
存亡のかかった、国境を越える課題への取り組みに対し、米中が互いの違いを理由に取り組みの進展を滞らせることがないようにすることは、インド太平洋および世界の利益になると考える。
インド太平洋の諸課題
インド太平洋は他の大きな課題にも直面している。気候変動の影響はこれまで以上に厳しくなっており、南アジアでは氷河が溶け、太平洋の島々は海面の危機的な上昇に対峙している。
コロナ感染症の爆発的流行により、インド太平洋は人的・経済的損失に苦しみ続けている。
北朝鮮は違法な核兵器・核ミサイル計画を拡大し続けている。インド太平洋の各国政府は自然災害、資源不足、国内紛争、統治の困難さに取り組んでいる。
こうした課題が野放しのままに放置されれば、この地域の安定を脅かす脅威となる。
同盟国・パートナーとの連携の強化
我々はインド太平洋に関わる大いなる期待と歴史的な障害を有するきわめて重要な10年の中にあり、この地域でのアメリカの役割はこれまで以上に効果的でしっかりとしたものでなければならない。
そのために、これまでの長きにわたる同盟関係を現代化し、新たなパートナーシップを強化し、地域の機構に投資する。こうした取り組みの集合的な力によって、インド太平洋は21世紀の課題に適応し、機会をとらえる力を得ることになる。
中国、気候変動の危機、コロナ感染症の爆発的感染が我々に試練を課す中にあって、つながりを構築し、繁栄を享受し、安全で、耐性・復元力のあるインド太平洋を実現するという積極的な構想に向けて、我々は同盟国やパートナーとともに取り組まなければならない。
ここに提示する国家戦略は、その取り組みの概要を示し、米国がその成功に向けて責任を持って関与するものである。
出典:INDO-PACIFIC STRATEGY OF THE UNITED STATES FEBRUARY 2022 THE WHITE HOUSE WASHINGTON
Ⅱ. 米国のインド太平洋戦略
米国は自由で開かれ、つながりと繁栄をもたらし、安定と耐性のあるインド太平洋の実現のために尽力している。
こうした未来を実現するために、米国は自らの役割を強化する一方、インド太平洋自体の強化にも取り組んでいる。この方策で重要なことは、米国単独ではこれを達成できないということにある。戦略環境が変化する中で歴史的な課題に取り組むには、ビジョンを共有する諸国とのこれまでにない協力が必要である。
何世紀もの間、米国と世界の多くはアジアを地政学的に対立する領域として、あまりにも狭い捉え方をしてきた。今日、インド太平洋の諸国は国際秩序のまさに中心そのものを決定づける役割を持ち、米国と世界中のパートナーがその結果に利害を有している。
したがって、米国が取る方策は、親密な関係のある国々の利害を踏まえて考案され、またそうした利害とともにあることになる。
日、印、豪、韓と共に
日本が信じているのと同様に、米国はインド太平洋ビジョンの成功によって自由と開放性が進展し、「自律と選択」がもたらされるにちがいないと考えている。
米国は力強いインドを、この積極的な地域ビジョンのパートナーとして支持する。オーストラリアと同様に、米国は安定の維持を求め、威圧的な力の行使を拒否する。韓国と同様に、能力開発を通じた地域の安全保障の促進をめざす。
ASEANやEUなどと共に
ASEANと同様に、米国は東南アジアを地域の屋台骨の中核として理解している。
ニュージーランドおよび英国と同様に、米国はルールにもとづく地域の秩序に耐性と復元力が備わることを求める。フランスと同様に、米国はヨーロッパ連合(EU)のインド太平洋地域での役割の増進が持つ戦略的価値を認識している。
EUがインド太平洋における協力のための戦略で公表した方策とほぼ同様に、アメリカの戦略は長期にわたり、民主主義の耐性と復元力を備え、それに根ざすものである。
インド太平洋における5つの目標
米国はインド太平洋において5つの目標を追求する。それぞれの目標は、米国の同盟国やパートナー、地域の機構と協調するものである。目標は次のとおりである。
- 自由で開かれたインド太平洋の推進
- インド太平洋の内外での連携の構築
- インド太平洋の繁栄の促進
- インド太平洋の安全保障の強化
- 国境を越える脅威に対するインド太平洋の耐性と復元力の構築
1. 自由で開かれたインド太平洋の推進
主権の尊重
米国および親密なパートナーの国益は、自由で開かれたインド太平洋の実現を求め、そこでは、各国政府が自らの主権にもとづいて判断し、国際法の義務の履行を可能とし、領海、領空、その他の領域は法にもとづいて統治される。
耐性と復元力(レジリエンス)
それゆえに、米国の戦略は、米国内で取り組んできたことと同様に、インド太平洋の諸国において耐性と復元力を築くことから始まる。
インド太平洋でのこうした取り組みには、開かれた社会を支える努力、各国政府が威圧や強制にしばられることなく独立して政治判断を行うことができることを確保するための努力が含まれる。
情報、メディア、市民社会
そのために、米国は民主的諸制度、報道の自由、活気に満ちた市民社会への投資をすすめる。
米国は情報と表現の自由を高め、外からの介入を許さないことに取り組むが、そのためには、調査報道を支援し、メディア・リテラシーや多様で独立したメディアの活動を促進し、情報操作の脅威に対処するための協働をすすめることが欠かせない。
腐敗や威圧への対処
腐敗行為の防止に向けた米国初の戦略にもとづき、腐敗を明らかにし改革を促進させるために、インド太平洋における財政上の透明化を図る取り組みを進める。
外交関係、外国への援助、インド太平洋地域の組織との活動において、米国は、民主的諸制度、法の支配、説明責任をもつ民主的統治を強化するうえでのパートナーとなる。
米国はまた、経済的威圧に立ち向かうパートナーと協力していく。
海域の秩序維持
インド・太平洋が各国の境界を越えて開放性とアクセスを維持し、海と空が国際法にもとづいて管理され使用されることを確保するために、米国は意を同じくするパートナーとともに緊密に取り組んでいく。特に、米国は、南シナ海や東シナ海など、海域でのルールにもとづく往来の構築を支援していく。
技術、インターネット、サイバー空間
米国はまた、重要な新しい技術、インターネット、サイバー空間へのアクセスの共有を図るために、パートナーとともに取り組んでいく。
米国は開かれた、相互利用可能な、信頼できる、安全なインターネット環境を支えるために取り組み、国際的基準策定団体の正当性を維持するためにパートナーとともに調整し、価値の共通理解に沿った技術基準を促進し、研究者の交流と最先端分野における科学的データへの開かれたアクセスを支援し、サイバー空間とそれに関連する慣習において、責任ある行動の枠組みを推進するために取り組む。
2. インド太平洋の内外での連携の構築
集団的な取り組み
自由で開かれたインド太平洋は、新たな時代に向けた集団的な能力が築かれてはじめて達成されうる。活動をともにすることは今や、戦略的に必要なことだ。
米国がパートナーとともに築いてきた同盟、機構、ルールが受け入れられなければならない。必要であれば、協力してこれらを更新しなければならない。米国は諸国や機構との縦横につながる強く相互に強化しあう関係の中でこれを追求していく。
インド太平洋諸国との新たな関係
この取り組みは、緊密な同盟やパートナーシップとともに始まるが、米国はこうした関係を新たな方法で更新することに取り組んでいる。米国は条約にもとづく5つの同盟、すなわちオーストラリア、日本、韓国、フィリピン、タイとの関係を深めている。
また、インド、インドネシア、マレーシア、モンゴル、ニュージーランド、シンガポール、台湾、ベトナム、太平洋島嶼国など、地域の主要なパートナーとの関係を強化している。
米国はまた、特に日本と韓国の関係において言えることであるが、同盟国やパートナーが相互の関係を強化するよう促している。
クアッド(Quad)の取り組み
米国は同盟国とパートナーが自ら地域のリーダーシップを引き受けられるよう支援し、力づけていく。また、今日のきわめて重要な課題に立ち向かうために、特にクアッド(Quad)のような集団的な力を蓄える柔軟なグループの形成を通した取り組みを進める。
米国は国際医療、気候変動、重要かつ新しい技術、インフラ、サイバー、教育、クリーンエネルギーの分野において、クアッドによる協力を強化し続けると同時に、自由で開かれたインド太平洋に向けて、クアッドや他のパートナーと協力して取り組んでいく。
東南アジアをリードするASEAN
米国はまた、東南アジアをリードする強く独立したASEANを歓迎する。
米国はASEANが中核となることを承認し、地域の最も差し迫った課題において、ASEANが取り組む持続可能な解決策を支援する。
クアッドとASEANの協働
このため、米国はASEANと長期にわたる協力関係を深める一方、医療、気候と環境、エネルギー、運輸、性の公平と平等において、ハイレベルな新たな取り組みを立ち上げる。
米国はASEANが地域の中核となる機構として耐性と復元力を築けるよう取り組むとともに、クアッドがASEANと協働する機会を求めていく。
南アジアとの連携
米国はまた、南アジアのパートナーとASEANの密接な関係を支えていく。
南アジアと米国の間の取り組みは、人道支援と災害救援、海域の安全保障、水不足、パンデミックへの対処に取り組む枠組みの構築を重視している。
太平洋島嶼国との連携
米国は太平洋島嶼国にとって不可欠なパートナーであるよう努め、理解を共有する他のパートナーとの一層緊密な調整の中でこの取り組みを進める。
また、東南アジアと太平洋島嶼国において、米国の外交的プレゼンスを意味あるものとして高めていく。米国はまた、太平洋での米国の役割の基盤としての自由連合盟約にもとづく交渉を重視していく。
EUやNATOとの連携
インド太平洋の外にある同盟国やパートナー、とりわけEUと北大西洋条約機構(NATO)によるインド太平洋への新たな関心が高まっている。
米国はインド太平洋での取り組みを連携させるためにこの機会を利用し、取り組みの効果を拡大させるこうした連携において、イニシアティブを発揮していく。
米国はデジタル分野を重視し、地域の連携を構築するために、また、とりわけ海域での国際法を順守する立場で、協力して取り組んでいく。
こうして、米国は集団的活動を促進する共通の政策を主導することにより、インド太平洋とヨーロッパ大西洋の関係、さらに他の地域との関係において、橋渡しを行っていく。米国はまた、国連での緊密な連携を通じ、共通のビジョンを進めていく。
人びとの交流
米国による連携の取り組みは、各国政府との関係の構築だけではなく、人びとの交流を橋渡しするものでもある。
米国はインド太平洋からの学生に対する教育の主要な担い手である。米国で学ぶ留学生の約68パーセントがインド太平洋の出身であり、このことで、米国とインド太平洋諸国の、次世代における関係を活気づける取り組みが築かれている。
米国は東南アジア若者リーダーシップイニシアティブ(YSEALI)など、われわれの絆を長く支えてきた若者リーダーシップの取り組み、交換留学や専門家交流、英語トレーニングプログラムを再活性化させていく。
STEM教育での連携
同時に、米国は科学と技術の重要な分野での、最先端の共同研究のための新たなパートナーシップを促進させていく。この取り組みには、クアッド・フェローシップを通じた、オーストラリア、日本、インド、アメリカの学生に対する、科学・技術・工学・数学(STEM)領域での大学院教育を支援する取り組みが含まれている。
こうした取り組みやその他のプログラムを通じ、米国は次世代における人びと同士のつながりに投資し続けていく。
出典:INDO-PACIFIC STRATEGY OF THE UNITED STATES FEBRUARY 2022 THE WHITE HOUSE WASHINGTON
3. インド太平洋の繁栄の促進
米国とインド太平洋の経済的つながり
一般的なアメリカ人の繁栄は、インド太平洋とつながっている。米国はこのつながりを経済と結びつけるために、革新的な新しい枠組みを推進する。この取り組みは経済の緊密な統合による強い基盤の上に構築される。
米国とインド太平洋の輸出入貿易は2020年に総額で1兆7500憶ドルにのぼるが、これは500万件以上のインド太平洋関連の仕事を支えている。米国からの外国直接投資は2020年に9690憶ドル以上で、過去10年でおよそ2倍になった。
米国はASEAN加盟国の第1位の投資パートナーであり続け、東南アジアへの米国に続く投資パートナー3か国の投資額の合計よりも多くを投資している。米国はインド太平洋へのサービスの輸出国の第1位であり、これが地域の成長を促している。
パンデミックからの回復のために
コロナウイルス感染症のパンデミックにより、経済成長を促す広範囲にわたる回復策が必要なことは明らかだ。
そのためには、イノベーションをもたらし、経済競争力を強化し、賃金の良い仕事を生み出し、サプライチェーンを再建し、中産階級の経済的機会を拡大する投資が必要である。
今後10年のうちに、インド太平洋の15憶人が世界の中産階級に加わることになるだろう。
新たな経済的枠組み
米国はパートナーとともに、21世紀の多国間パートナーシップであるインド太平洋の経済的枠組みを提唱する。この経済的枠組みは、我々の経済圏がデジタル経済を含む急速な技術的変革を活用し、今後のエネルギーと気候の移行を受容することに貢献するものだ。
米国は、米国とインド太平洋の統合を深めながら、太平洋の両岸の市民がこの歴史的な経済的変化の利益を得られるよう、パートナーとともに取り組む。
自由で公正な貿易・取引とデジタル経済・サプライチェーン
米国は労働と環境における高い基準に合った貿易の新たな方策を開発し、新たなデジタル経済と、新たなデジタル経済の枠組みを含めた透明性のある原則にもとづく国境を越えたデータの流れを管理する。
米国は障壁を取り除き、透明性と情報共有を向上させる一方、多様で、開かれた、予測可能な、耐性と復元力のある安定したサプライチェーンを進展させるためにパートナーとともに取り組む。
米国は脱炭素とクリーンエネルギーに共同で投資し、自由で、公正な、開かれた貿易と投資を促進するために、米国が議長を務める2023年およびそれ以降においても、アジア太平洋経済協力(APEC)の枠組みの中で取り組む。
インフラ整備とルールに基づく経済
米国はまた、インフラ整備の格差を解消するためにインド太平洋のパートナーを支援することに一層取り組む。
G7のパートナーとともに、より良い世界の再建イニシアティブを通じ、インド太平洋の新興経済圏に、成長と繁栄を可能にする高水準のインフラを整備する一方、太平洋の両岸に良い仕事を生み出していく。こうした取り組みの中で、米国は、耐性と復元力のある安定したグローバルな通信回線を広げていく。
このために、5G供給業者の多様化と開かれた無線アクセスネットワーク(O-RAN)技術に注力し、新規の信頼できる参入者を受け入れる姿勢をもった通信回線の供給市場を求める取り組みを進めていく。
米国はまた、21世紀の経済活動を統治するルールの設定に主導的役割を果たしているインド太平洋の経済パートナーと協力する。以上、米国は、急速な経済的転換を米国とインド太平洋の共通の機会として生かしていく。
4. インド太平洋の安全保障の強化
米国のプレゼンス
75年間、米国は、インド太平洋の平和、安全、安定、繁栄を支えるために必要な強力で一貫した防衛プレゼンスを維持してきた。米国はインド太平洋の不動の同盟国であり、21世紀もそうあり続ける。
現在、米国はこの役割を拡張し、現代化することに取り組んでいる。米国は、国益を守り、攻撃的な行動を阻止し、米国が支配する領域や同盟国・パートナーへの威圧に対して対抗する能力を高めている。
抑止力の統合
抑止力の統合が我々の方策の土台となる。戦闘領域や紛争の場において、米国は同盟国やパートナーとともに、あらゆる形態や領域における攻撃的行為を阻止し、打ち負かすことを確実にするために、より密接に一体化していく。
我々は抑止力を強化し、国境の変更や海域での主権国家の権利を侵害する敵対行為のような威圧に対抗するイニシアティブを進める。
統合の具体策
米国は米軍が宇宙、サイバー空間、重要で新しい技術分野などの急速に進展する脅威環境に対応できるよう、イノベーションに力を注ぎ、その取り組みを更新していく。
米国は作戦行動の新しい概念を開発しており、さらに耐性と復元力のある指揮統制を構築し、合同の演習・作戦行動の範囲と複雑性を広げ、同盟国・パートナーとの先進的かつ柔軟に展開する能力を強化する多様な軍事的態勢の機会を追求していく。
安全保障ネットワークの構築
広範囲に及ぶ戦略的方策の中で、米国は1つの大きな比類なき強さ、すなわち、安全保障における同盟・パートナーシップのネットワークの構築に優先して取り組む。
インド太平洋において、米国は同盟国・パートナーの市民や主権に関わる利益を守りながら、相互運用性の深化や高度な戦闘能力の開発・配備に取り組む。米国はオーストラリア、日本、韓国、フィリピン、タイとの条約上の同盟関係を現代化する取り組みを続ける。
また、米国はインドとの主要防衛パートナーシップ(Major Defense Partnership)を着実に進め、安全保障ネットワークの提供者としてのインドの役割への支援を続ける。さらに、南アジア、東南アジア、太平洋島嶼国でのパートナーの防衛力の構築を続ける。
台湾への関与
米国はまた、台湾の自衛力を支援することにより、台湾の将来が台湾の人びとの願いと最善の利益に沿って平和的に決められる環境を確保することを含め、台湾海峡での平和と安定を維持するためにインド太平洋の内外のパートナーとともに取り組む。
この取り組みにおいて、米国の方針は1つの中国政策、台湾関係法、3つの共同コミュニケ、6つの保証のもとでの米国の長期にわたる関与と一致するものである。
インド太平洋とヨーロッパの関係構築
米国はインド太平洋内外における同盟国とパートナーの間の安全保障関係を発展させるが、これには、米国の産業基盤とつながる新たな機会を見出すこと、防衛のためのサプライチェーンを統合すること、集団的な軍事的優位性を強化する主要な技術を共同で開発することが含まれる。
この取り組みではインド太平洋とヨーロッパのパートナーをAUKUS(豪英米の安全保障協力)を含む新たな方法でまとめあげていく。
北朝鮮への対応
北朝鮮が不安定さを増大させる核・ミサイル計画を開発し続ける中、米国は朝鮮半島の完全な非核化、度重なる人権侵害への対処、北朝鮮の人びとの生活の向上という目標に向けて、真剣かつ持続可能な対話を求めつづける。
同時に、米国は北朝鮮の挑発行為に対処し、抑止の備えを維持しながら、必要となれば米国と同盟国へのいかなる攻撃をも打ち負かすために、韓国・日本との広範囲にわたる抑止力と協調を強化する一方、インド太平洋での核不拡散の努力を強化していく。
核・大陸間弾道ミサイルシステムや戦略的安定に関わる他の新たな脅威に対する広範な抑止力を強化する一方、米国は危機を防止し管理するために、米国のライバルを含め、多くの主体と協力する道を求めていく。
テロリズムへの対抗
米国はまた、米国沿岸警備隊のプレゼンスを拡大し、パートナーの能力を引き上げるために訓練・助言を行うことにより、市民の安全に関わる課題に対して新たな取り組みを進める。
米国はテロリズムと暴力的過激主義に対処し、これを防止するために協力して取り組むが、これには、インド太平洋へ移動してくる外国からの戦闘員を特定し監視すること、オンライン上での過激化を抑制する手段を策定すること、インド太平洋での対テロリズムでの協力を促進させることなどが含まれる。
自然災害、武器・薬物・人身の売買、サイバーセキュリティ
米国は環境、自然災害、自然発生的または故意の生物学的脅威、武器・薬物・人身の売買に対する備えと対処のために、インド太平洋の集団的な能力を強化する。
米国はサイバーセキュリティに関わる事件の防止と回復・対処のためのパートナーの能力を含むインド太平洋でのサイバーセキュリティを強化する。
5. 国境を越える脅威に対するインド太平洋の耐性と復元力の構築
温暖化への対処
インド太平洋は気候変動の危機の中心であるが、その解決においても重要な地域である。
パリ協定の目標を達成するには、インド太平洋の経済大国がそれぞれの目標を協定で示された気温の目標に合わせることが求められている。これには温暖化を摂氏1.5度までに抑えることを求める大きな目標に向けて、中国が責任を持って行動するよう要請することが含まれる。
気候変動の危機に対する我々の共通の対応は世界の自然災害の70%を占めるインド太平洋においては政治的責務と経済的機会の両方の意味を持つ。
米国は世界の気温上昇を摂氏1.5度に抑えることに合わせ、2030年および2050年の目標・戦略・計画・政策を立てるためにパートナーとともに取り組み、ネット・ゼロの未来に向けたインド太平洋の転換期における望ましいパートナーとして貢献することを求めていく。
クリーンエネルギーへの投資と開発
米国はクリーンエッジ(Clean EDGE)のようなイニシアティブを通じ、クリーンエネルギー技術への投資と開発を奨励し、エネルギー分野の脱炭素化を促進する道を求め、気候変動への対応に合わせたインフラ整備への投資を育てていく。
米国は気候変動と環境悪化の影響に対するぜい弱さを軽減するためにパートナーとともに取り組み、重要なインフラの耐性と復元力を支え、エネルギーの安全保障に取り組む。
海洋の健全で持続可能な利用
米国はまた、インド太平洋の広大な海洋の健全で持続可能な利用を守るために、法に基づいた資源の利用、調査協力の発展、利益を享受する取引と輸送の促進を通じて取り組む。
パンデミックの終結と危機への耐性・復元力の構築
米国はコロナウイルス感染症のパンデミックを終わらせ、共通の脅威に対する耐性と復元力を構築することに貢献するために、インド太平洋とパートナーを組んでいく。
米国は今後の衝撃に耐え、世界的な医療の安全保障への投資を促進し、生物学的脅威を含む緊急事態を防止・発見・対処するための地域の基盤を拡大するために、医療システムを強化することに向けてパートナーと緊密に取り組む。
米国はまた、備えと対応を強化するために、世界保健機関(WHO)、G7、G20、その他の多国間会合を通じて取り組む。米国は、ASEAN、APEC、太平洋諸島フォーラム(PIF)と密接な連携を取りながら、耐性と復元力の構築に向けた努力を進める。
出典:INDO-PACIFIC STRATEGY OF THE UNITED STATES FEBRUARY 2022 THE WHITE HOUSE WASHINGTON
Ⅲ. インド太平洋アクションプラン
この戦略を実行するために、米国は今後12カ月から24カ月の間に、10項目の主要な取り組みを行っていく。
● 新たな資源をインド太平洋に投入する
共有する能力の構築には米国によるインド太平洋への新たな投資が必要である。米国は東南アジアと太平洋島嶼国に新たな大使館・領事館を開くとともに、既にあるそれらの機能を強化し、気候変動、医療、安全保障、開発の取り組みを強める。
米国は東南アジア、南アジア、太平洋島嶼国での米国沿岸警備隊によるプレゼンスや協力を拡大するために、助言、訓練、開発、能力構築の取り組みに力を注ぐ。米国は海洋能力や海域認識の構築など、インド太平洋での安全保障の支援に改めて力を注ぐ。米国はまた、平和部隊など、市民交流(Peace Corps)の役割を拡大する。
米国政府内においては、米国がインド太平洋の課題に向き合うために必要な能力と専門性を確保する。
これら全般にわたり、米国は連邦議会と協力し、政策と資源がインド太平洋での強力で安定した役割を発揮できるよう、必要な超党派の支援を得ていく。
● インド太平洋の経済的枠組みを主導する
米国は2022年の早い段階で、高度な基準の貿易を促進・円滑化し、デジタル経済を統治し、サプライチェーンの耐性・復元力と安全を向上させ、透明性のある高度な基準のインフラ投資を進め、デジタル接続性を構築する新たなパートナーシップを立ち上げる。
これは、米国とインド太平洋の経済的つながりを強化する一方、広く認識が共有されているインド太平洋での機会に貢献するものである。
● 抑止力を強化する
米国は自国の国益を守り、自国や台湾海峡を含む同盟国・パートナーに対する軍事攻撃を阻止し、新たな能力、戦闘の概念、軍事行動、防衛産業イニシアティブ、さらに耐性と復元力のある軍事態勢などを発展させることで、インド太平洋の安全保障を促進する。
米国は太平洋抑止イニシアティブと海洋安全保障イニシアティブを設立するために連邦議会と協力する。AUKUSパートナーシップを通じて、米国はできる限り早い時期でのオーストラリア海軍への原子力潜水艦の供給に向け、最適な方策を見出す。
加えて、米国はサイバー、人工知能、量子技術、海中での能力など、先進的な能力に関わる具体的な作業計画を通じ、協力を深化させ、相互運用性を高めていく。
● 力と結束力のあるASEANを強化する
米国は米国とASEANの関係において新たな投資を行い、ワシントンにおいて、初めてとなる歴史的なASEAN特別サミットを開催し、ASEANの指導者たちを招く。米国は東アジアサミットとASEAN地域フォーラムに関わり、ASEANとの新たな大臣レベルでの関係を求めていく。
米国は新たな米国・ASEANイニシアティブに1憶ドル以上を出資する。米国はまた、医療の安全保障を強化し、海洋での課題に取り組み、接続性を高め、人びとの交流を深めるための取り組みに力を入れることで、東南アジアでの相互の協力を拡大する。
● インドの引き続く台頭と地域におけるリーダーシップを支援する
米国は米国とインドの戦略的パートナーシップの構築を図り続けるが、これには、南アジアでの安定を促進するために協力し、また地域における集団づくりを通じてこれに取り組むこと、医療、宇宙、サイバー空間のような新たな領域で協力すること、経済的・技術的協力を深化させること、自由で開かれたインド太平洋のために貢献することなどの取り組みがある。
米国はインドが南アジアとインド洋における同様の意思を持ったパートナーでありリーダーであること、東南アジアと積極的に関わること、クアッドや他の会合の原動力であること、インド太平洋の成長と発展のエンジンであることを理解している。
● クアッドの役割を果たす
米国はインド太平洋の主要な枠組みとしてのクアッドを強化し、地域での課題において確実に役割を果たしていく。クアッドはインド太平洋と世界に向けて追加の10憶回分のワクチンを提供する投資を行い、コロナウイルス感染症対策と世界的な医療安全保障における地域での主導的役割を担う。
クアッドは重要かつ新しい技術、サプライチェーンにおける協力の促進、合同の技術配備、共有する技術原則の進展における作業を進める。クアッドは安全な船舶輸送ネットワークを構築し、人工衛星からのデータの共有化を海域認識や気候変動への対応に生かしていく。
クアッドのメンバーは南アジア・東南アジア・太平洋島嶼国において高い基準のインフラを提供することに協力し、これらの地域でのサイバー能力の向上に取り組む。
クアッド・フェローシップを2022年に正式に立ち上げ、2023年に開始する米国でのSTEM(科学・技術・工学・数学)分野における教育プログラムにおいて、大学院課程の学位を目指す4カ国からの優秀な学生100人を採用する。
クアッドでは定期的に首脳・閣僚レベルの会合を開催していく。
● 米日韓の協力を拡大する
ほとんどすべてのインド太平洋の課題において、米国の同盟国やパートナーとの緊密な協力が必要であり、特に日本と韓国の協力が求められる。米国は北朝鮮をめぐる問題について、3カ国のチャンネルを通じて緊密に連携していく。
安全保障だけでなく、地域の開発とインフラ整備、重要な技術やサプライチェーンの課題、女性のリーダーシップと地位向上において協力する。米国は今後さらに3カ国間での地域戦略の調整を図っていく。
● 太平洋島嶼国での耐性・復元力の構築にパートナーとして取り組む
米国は太平洋島嶼国が確固たる独立した主体として能力と耐性・復元力を構築していくために、これを支援する多国間の戦略的枠組みを築くことにパートナーとともに取り組む。
あわせて、米国は太平洋地域インフラ整備を通じて、気候変動への耐性と復元力を構築し、太平洋地域のインフラ格差、特に情報と通信技術における格差の解消に向けて取り組み、輸送を円滑化し、漁業を守り、海域認識を構築し、訓練と助言を向上するために協力する。
米国はまた、自由連合諸国との自由連合協定の締結に重点的に取り組んでいく。
● 良好な統治と説明責任を支援する
米国はインド太平洋諸国の政府が独立した政治的選択を行う能力を持てるよう支援するが、これには、外国への支援・開発政策、G7 やG20のリーダーシップ、オープン・ガバメント・パートナーシップでの新たな役割を通じ、パートナー諸国が腐敗を根絶できるよう支援することが含まれる。
米国はまた、各国政府、市民社会、ジャーナリストが外国からの介入や情報操作のリスクを明らかにし、これを抑制する能力を持つことができるよう連携していく。
米国はミャンマー軍が民主主義へと回帰するよう要請するため、同盟国やパートナーと緊密に連携し、ミャンマーにおける民主主義のための活動に引き続き取り組むが、これには(ASEANで合意された)5つのコンセンサスの確実な実行が含まれる。
● 開かれた、耐性・復元力のある、安心・安全な、信頼できる技術を支援する
米国は共通の基準の開発を可能にする検査基盤へのアクセスの共有化といった取り組みを通じ、検査の大規模な商業展開と協力を支援し、開かれた無線アクセスネットワーク(Open RAN)のような革新的なネットワーク・アーキテクチャを通じて、安心・安全な信頼できるデジタルインフラ、特にクラウドと通信回線の供給業者の多様化を促進する。
米国はまた、政府やインフラの重要なネットワークにおける耐性・復元力の共有を深化させる一方、集団的なサイバーセキュリティとサイバー事件への迅速な対応を向上させるため、インド太平洋の新たなイニシアティブを構築する。
出典:INDO-PACIFIC STRATEGY OF THE UNITED STATES FEBRUARY 2022 THE WHITE HOUSE WASHINGTON
Ⅳ. 結語
米国は第2次世界大戦以来求められてきた以上にインド太平洋での関与が求められるという、アメリカの外交政策の重要な新たな時代に入っている。
インド太平洋における米国の国益は、これを守ることが難しくなってきた今まさに、その重要性がかつてなくはっきりとしている。
米国には大国外交と国境を越える脅威との戦いの間で選択を行うといった余裕があるわけではない。米国は外交、安全保障、経済、気候変動、パンデミックへの対応、技術分野においてリーダーシップを発揮する責任が求められている。
インド太平洋の未来は米国が今なす選択にかかっているのだ。
インド太平洋が気候変動に立ち向かい、世界がいかに100年に1度のパンデミックから立ち直るかを明らかにすることができるかどうか、また、インド太平洋の繁栄を促進するための開かれた、透明性のある、包摂性の原理を維持することができるかどうかは、我々の前にあるこの決定的な10年によって決せられる。
米国がパートナーとともに、21世紀における課題に向けて地域を強化し、その機会をつかみ取ることができるならば、インド太平洋は、米国と世界に貢献し、繁栄する地域となるであろう。
「米国はインド太平洋において洋々たる前途と歴史的な障害が存在するきわめて重要な10年に入っており、この地域でのアメリカの役割はこれまで以上に効果的で確固たるものでなければならない。」
米国の重要な戦略的目標は、世界とアメリカ国民にとってインド太平洋以上に重要な地域は存在せず、米国と同盟国・パートナーがこれについて共通のビジョンを持っているという考えに由来している。
基本的な柱が共有されているこの戦略を追求し、これを実現するための地域の能力を高めることにより、米国は他国と共に、今後何世代にもわたる自由で開かれ、つながりを持ち、繁栄し、安全で耐性と復元力のあるインド太平洋に向けて、リーダーシップを発揮することができるのである。
出典:INDO-PACIFIC STRATEGY OF THE UNITED STATES FEBRUARY 2022 THE WHITE HOUSE WASHINGTON