米PBSのNewsHour(2021年5月17日、米東部時間)が、アフガニスタンのアシュラフ・ガニ大統領のインタビューを放映しています。
米撤退表明後も進展ないアフガン政府とタリバンの話し合い
アフガニスタンについては、バイデン大統領が2021年9月11日までに米軍を撤退させることを表明していますが、これを受けてのアフガン政府とタリバンとの話し合いは必ずしも順調に進んでいないようです。
また、アフガン市民へのテロ攻撃もあとを絶たず、2021年5月8日の首都カブールの学校近くでの爆発では、多数の女子学生の命が奪われました。
上記のPBSインタビューの前段では、爆破テロに直面した女子学生の次の言葉が紹介されています。
I will resist against them. If they use guns, I will use my pen. Everyone, my father, mother and uncle, encourage me to continue, and I will continue.
私は彼ら(タリバンを含む反政府勢力やテロ組織)に抵抗します。彼らが銃を使うなら、私はペンで対抗します。父、母、おじ、皆が、私が学校に通うことを願っています。私は勉強を続けます。
見通せない女性の地位と権利の保障
女性の地位と権利をめぐるアフガン政府とタリバンとの関係について、インタビューでは次のようなやりとりがあります。しかし、その見通しは明るいものではありません。
Amna Nawaz:
アムナ・ナワズ(PBS NewsHour のアンカー代理):
Let me ask you about the state of women, as you mentioned, because there are parts of the country in which the Taliban do hold rural parts of the country.
大統領も言及しておられる女性の地位について伺います。といのは、タリバンがアフガニスタンの地方の一部を掌握しているからです。
And there are some places in which they have reinstituted something close to the brutal regime that they oversaw in the ’90s, when women do not have the same rights they had before.
そこでは、タリバンが1990年代にアフガニスタンを支配した当時と同じような強圧的な状態を復活させ、女性たちはこれまでに得た権利を失っています。
I’m curious how you approach those areas. Do you plan on launching offenses to go in and help women secure those rights? Or does Afghanistan’s future mean your rights depend on where you live as a woman?
こうした状況の地域に対してどう取り組むのでしょう。女性の権利を保障するために戦いを始める考えはありますか。それとも、女性の権利は住む場所によって異なるというのがアフガニスタンの将来の姿なのでしょうか。
Ashraf Ghani:
アシュラフ・ガニ大統領:
The basic issue is citizenship.
基本的な問題は市民権の保障です。
Our constitution is amendable, except in two areas. One, the Islamic character of the state cannot be amended. Second, the rights of citizens can only be improved through amendment, not — so it is crucial that we remain focused on the values that holds the society and gives it hope.
アフガニスタンの憲法は修正可能ですが、次の2点についてはそうではありません。1つは、この国がイスラム国家であるという点です。2つめは、市民権はそれが拡大される場合を除いて、修正されることはありません。社会を維持し希望を与えるという考え方を保持することが極めて重要なのです。
If Taliban want peace, then it has to be peace that respects the gains of the citizens of Afghanistan and among them, first and foremost, women.
タリバンが平和を望むのであれば、その平和は、アフガン市民が得た権利、なかでもまず第1に女性の権利が尊重される平和でなければなりません。
If they do in the want peace and want to gain power through violence and impose a remember, a dictatorial regime, than the — all the patriotic forces of Afghanistan would have to rally and make a decision. And that issue, unfortunately, would have to be decided on the field of battle.
タリバンが自分たちの欲する平和を実行し、暴力を通じた権力とかつての独裁的な体制を課すことを望むのであれば、アフガンのすべての愛国的な力が結集し、決断を下さなければなりません。不幸なことですが、それは戦闘の場で決せられることになるでしょう。
タリバンが話し合いを拒否すれば平和の墓場に
なお、アフガニスタンのこれからやタリバンとの交渉をめぐるガニ大統領の考え方については、Foreign Affairsのウェブサイトに2021年5月4日付で「Afghanistan’s Moment of Risk and Opportunity A Path to Peace for the Country and the Region」と題する大統領自身の論考が掲載されています。
その論考には次のような記述が見られます。
The U.S. decision surprised the Taliban and their patrons in Pakistan, and it has forced them to make a choice. Will they become credible stakeholders, or will they foster more chaos and violence? If the Taliban choose the latter path, the ANDSF will fight them. And if the Taliban still refuse to negotiate, they will be choosing the peace of the grave.
米国の(撤退の)決断はタリバンやパキスタンの後援者を驚かせ、彼らに選択肢を与えた。彼らは信頼できる当事者になることを選択するか。それとも、さらなる混乱と暴力をもたらすのか。タリバンが後者の道を選択するなら、アフガン政府軍は彼らと戦う。タリバンが話し合いを拒否するなら、平和の墓場を選ぶことになる。
ということで、ここでもタリバンとの交渉が決裂した場合のアフガン政府軍とタリバン勢力らとの戦争の可能性が示唆されています。
一方で、米国の専門家の間では、アフガン政府軍の力量に対する懸念の声も少なくないようです(たとえば、時事通信の2021年4月23日付「アフガン治安悪化を懸念 政府軍の能力不足指摘―米司令官」)。