【アフガニスタン/アメリカ外交】タリバンのアフガン支配は不可避ではない-バイデンの演説から

バイデン大統領は2021年7月8日、アフガニスタンからの米軍の撤退の状況について演説し、記者からの質問に答えています。

米軍がアフガンに留まり続ける必要も、米軍兵士の命を危険にさらす理由もない

バイデン大統領は米軍の撤退が8月末までに完了すると述べたうえで、9.11テロ事件への制裁と米国に対するテロの脅威を除去する目的が達せられた以上、米軍がアフガンに留まり続ける必要はなく、米軍兵士の命を危険にさらす理由もないとの主張を改めて強調しています。

タリバンのアフガン支配は不可避ではない

バイデン大統領はまた、演説後の記者とのやりとりの中で、タリバンがアフガンを占領・支配することは避けられないとする予測に否定的な見解を示しています。

大統領と記者のやりとりの一部を以下に引用してみます。

Q Mr. President — do you trust the Taliban, Mr. President?
記者:大統領、タリバンを信用していますか?

Q Is a Taliban takeover of Afghanistan now inevitable?
記者:今やタリバンがアフガニスタンを奪取するのは不可避なことですか?

THE PRESIDENT:  No, it is not.
大統領:否、不可避ではない。

Q Why?
記者:なぜそう思われるのですか?

THE PRESIDENT: Because you — the Afghan troops have 300,000 well-equipped — as well-equipped as any army in the world — and an air force against something like 75,000 Taliban.  It is not inevitable.
大統領:7万5000人のタリバンの戦闘員に対し、アフガン政府軍は30万人の兵士を持ち、それは世界のいかなる軍隊にも匹敵する装備を備え、空軍もあるのだ。タリバンがアフガニスタンを奪取するのは不可避なことではない。

Q  Do you trust the Taliban, Mr. President?  Do you trust the Taliban, sir?
記者:タリバンを信用していますか、大統領? タリバンを信用していますか?

THE PRESIDENT:  You — is that a serious question?
それはまじめな質問かね?

Q    It is absolutely a serious question. Do you trust the Taliban?
もちろんまじめな質問です。タリバンを信用していますか?

THE PRESIDENT:  No, I do not.
大統領:否、信用していない。

Q Do you trust handing over the country to the Taliban?
記者:タリバンを信用してアフガンを引き渡すのですか?

THE PRESIDENT:  No, I do not trust the Taliban.
大統領:否、タリバンを信用してはいない。

Q So why are you handing the country over?
記者:ではなぜ、アフガンを引き渡すのですか?

Q Mr. President, is the U.S. responsible for the deaths of Afghans after you leave the country?
記者:大統領、米国がアフガンから撤退した後、アフガン人の犠牲者に対する米国の責任はありますか?

Q Mr. President, will you amplify that question, please? Will you amplify your answer, please — why you don’t trust the Taliban?
記者:大統領、質問に詳しく答えていただけませんか? お願いします。なぜタリバンを信用できないのでしょうか?

THE PRESIDENT:  It’s a — it’s a silly question. Do I trust the Taliban?  No. But I trust the capacity of the Afghan military, who is better trained, better equipped, and more re- — more competent in terms of conducting war.
大統領:ばかげた質問だ。タリバンを信用するか? 答えはノーだ。しかし、アフガン政府軍の能力は信頼している。彼らはよく訓練され、装備も整い、戦争を遂行する能力ももっと備わっている。

そのうえでバイデン大統領は、米国はアフガン政府とアフガン政府軍を長年にわたって支援してきた。彼らはそれ相当の能力を備えており、アフガンの平和と安全保障は、彼らとタリバンとの交渉で合意を作り出すことにかかっていると述べています。

バイデン大統領はその一方で、アフガン全体を統治する統一的な政府が作られる可能性は極めて低いとも述べています。

前回の当ブログ記事で紹介した「アフガン政府はアメリカの完全撤退後6か月以内にタリバンに屈する可能性がある」とする米インテリジェンスの予測や、「今の状況が続けば、アフガンはまちがいなく内戦になる。今よりもさらに暴力が増大する」とする米司令官の予測と、バイデン大統領の今回の演説や記者とのやりとりに示された認識には開きがあるようです。

演説および記者とのやりとりのスクリプトと映像はは以下からご確認ください。

スクリプト:Remarks by President Biden on the Drawdown of U.S. Forces in Afghanistan JULY 08, 2021 SPEECHES AND REMARKS East Room
映像:Biden Delivers Remarks On U.S. Troop Withdrawal From Afghanistan | NBC News

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