先日読み終えたクレイグ・ウィットロック著/河野純治訳『アフガニスタン・ペーパーズ―隠蔽された真実、欺かれた勝利』(岩波書店、2022年)について紹介します。(原題:The Afghanistan Papers: A Secret History of the War、2021年)
同書の説明を「訳者あとがき」より抜粋します(「注」はブログ管理人による)。
・ 3人の歴代大統領(注:ブッシュ、オバマ、トランプ)とその軍司令官たちが、アメリカ史上最も長い戦争(注:アフガニスタン戦争)について国民を欺いてきたことを描き、ターリバーンによるアフガニスタン奪還を予見した、画期的な調査報道である。
ホワイトハウスや国防総省の指導者から、最前線の兵士や援助活動従事者まで、戦争で直接的な役割を果たした人々が語るさまざまな新事実が含まれている。
・ 彼らは、米国政府の戦略が混乱し、国造りプロジェクトが大失敗に終わり、麻薬と汚職がアフガニスタン政府の協力者に蔓延していたことを認めている。
・ アメリカがアフガニスタンの未来として思い描いた計画には、現地の歴史や宗教、文化と相いれない部分が多く、それが大きな失敗の原因であったことも伝わってくる。
・ この報告は、米国政府が、歪んだ、ときに完全に捏造された事実を伝えていることを知っていた千人以上の人々へのインタビューに基づいている。
・ 2001年のアメリカ同時多発テロに端を発し、20年も続いたアフガニスタン戦争は、2021年8月、米軍が完全に撤退し、その後、アフガニスタン全土を制圧したターリバーンの勝利に終わった。・
ということで、同書で紹介されている証言の数々は主に、連邦機関であるアフガニスタン復興担当特別監察官(SIGAR)事務所が、「米国が間違いを繰り返さないように、アフガニスタンにおける政策の失敗の原因を突き止めることを目的とし」(同書、序文より)て、戦争に関わった人々にインタビューした「学ばれた教訓」と呼ばれる記録に基づいています。
この「学ばれた教訓」の記録を得るために、著者のウィットロックは「ジャーナリストの人生における使命は、政府が隠蔽している真実を見つけ出し、それを一般に公開することだ」「国民には戦争に対する政府の内部批判を、ありのままの真実を知る権利がある」(同)と主張して情報公開を請求し、さらに、彼が所属しているワシントン・ポストはSIGARに対し、「学ばれた教訓」文書の詳細を公開させるための2つの連邦訴訟を起こしています。
こうした取り組みを経て編まれたのが、この『アフガニスタン・ペーパーズ』ということになります。
当ブログでは「アメリカの怪物:アフガンにおける拉致、拷問、殺害」(2024年8月17日付)の記事において、ニューヨーク・タイムズの調査報道を紹介し、アフガニスタン戦争のショッキングな現実の一端を紹介しました。
今回紹介している『アフガニスタン・ペーパーズ』を読むと、そうした現実が生じた背景がわかってきます。
また、同書の副題にあるように、アフガニスタン戦争がいかに「隠蔽された真実」と「欺かれた勝利」に満ちていたか、さらに、米連邦議会のチェック機能も十分に果たされていない実態を知ることができます。
アフガニスタン戦争を知るために、また、我々日本国民が米軍や、米軍と米国政府や連邦議会との関係を知るうえでも、読むべき書であるように思います。