wish の願い 幸運・成功を祈る

“We wish you a Merry Christmas,
We wish you a Merry Christmas,
We wish you a Merry Christmas,
And a Happy New Year.”

“クリスマスおめでとう、
クリスマスおめでとう、
クリスマスおめでとう、
そして、新年おめでとう!”
(訳:三宅忠明)

クリスマスソングとして知られる “We wish you a Merry Christmas” の冒頭の歌詞ですね。

ちなみに、この歌詞を訳された三宅忠明さんは、岡山県の高校や大学で教鞭をとられた英文学の先生だそうです。

さて、楽しいクリスマスソングに英文法など持ち出すのは野暮なことと承知のうえで、上の歌詞にも出てきた「幸運・成功を祈る」wish についてあれこれと述べてみたいと思います。

ジーニアス英和辞典(第6版)を引くと、wish の他動詞の4番目の項目に次のような説明があります。

④S V O1 O2 / S V O2 to O1
〈人が〉O1〈人〉に O2〈幸運・成功など〉を祈る
1)あいさつに多用される 2)語順については give の語法を参照

なるほど、wish には幸運や成功を祈る意味があり、あいさつに多用されているんですね(聞いたことがあるような、ないような…)。

したがって、We wish you a Merry Christmas, and a Happy New Year.”っていうのは、クリスマスや新年に向けた、ごく自然で慣習的なあいさつ、あるいは願いということになるわけですよね。

「お前はそんなことも知らないのか」と怒られそうですが、wish に希望の光が見えてきて、なんだかほっとします。

というのも、wish に関して言えば、僕の頭の中では「マイナス指向の動詞」のイメージが焼き付いているのです。

「…であればよいのだけれど(ひょっとしたらそうならないかもしれないよな)」という意味で使われるのが wish だと思い込んでしまっているのです。

実際、wish には that 節で would による仮定法過去を用いた「期待感の薄い願望」を表す表現がありますよね。

【例】
I wish you wouldn’t do this anymore.
 もうこんなことしないでくれたらいいのに。
I wish it would stop raining.
 雨が(どうもやみそうにないが)やめばよいのに。
(以上、ジーニアス英和辞典(第6版)を参照)

そのためかどうか、We wish you a Merry Christmas, and a Happy New Year.”と聞くと、that 節や would が使われてもいないのに、「まあ、そうであって欲しいと願うけれど、現実はね…。いやいや、クリスマスくらい陽気にいこうじゃないか!」などと妙なカラ元気を出してみたりするのです。

そうして景気づけにラジオなどをつけてみると、山下達郎の「クリスマス・イブ」が流れてきて――

“きっと君は来ない
ひとりきりのクリスマス・イブ
Silent night, Holly night
心深く 秘めた想い
叶えられそうもない
必ず今夜なら
言えそうな気がした
Silent night, Holly night”

ああ、彼の想いは叶えられなかったのだな…と、先ほどのカラ元気もどこへやら、かえってしんみりしてしまったりするのでした。

さらには、ひょっとして山下達郎もまた、 wish へのマイナスイメージに囚われながらこの歌詞を作ったのではないか、などと我田引水の過ぎる理屈をこねてみたりもするのでした。

さて、気を取り直し、ニューヨーク・タイムズのニュースレター「ザ・ワールド」から wish が登場する一節を取り上げてみます。

“Good morning, world! To those of you who, like me, celebrate Christmas (and perhaps celebrate it on Christmas Eve), I wish a love- and fun-filled day with family and friends.”
“世界の皆さん、おはようございます! 私もそうですが、同じようにクリスマスをお祝いする皆さんに(おそらくはクリスマス・イブの日に)、友人や家族との愛に満ちた楽しい一日があることを願っています。”
(2025年12月23日付 ニューヨーク・タイムズのニュースレター「ザ・ワールド」から抜粋、訳:筆者)

ここで、先ほどの英和辞典の説明を思い出していただきたいのですが、上の英文は、S V O2 to O1 のかたちをとりつ、「to O1」を前に出していることがわかりますよね。

長大な O1 を前に出したことで、誰に対して wish している(願っている)のかがよくわかるとともに、O2 であるところの「a love- and fun-filled day with family and friends」がくっきりと伝わってきます。

この一節の後、ニュースレターは「愛と言えば、(Speaking of love,)」と切り出しながら、ある女性がAIチャットボットの「ボーイフレンド」と築いた恋愛関係を取材した記事を紹介していくのですが、wish の話題からそれてしまうので、ここでは省略します。

最後に、前述の英和辞典の説明の項に添えられている例文を記します。wish のマイナスイメージが払しょくされることを「願って」います(払しょくしなければいけないのは僕の方ですが)。

【例文】
I wish you good luck.
 幸運をお祈りします。
I wish you a Merry Christmas.
 よいクリスマスをお迎えください。/クリスマスおめでとう。
I wish you a Happy New Year.
 よいお年をお迎えください。/新年おめでとう。
I wish a happy journey to all your friends.
 あなたの友だちみんなが楽しい旅行をなさいますように。
I don’t wish her any harm.
 彼女に危害のないことを願う。
We wished him well.
 我々は彼の幸運を祈った。※ well が成句で名詞扱いとなった表現。
We wished well to him.
 我々は彼の幸運を祈った。※ well が成句で名詞扱いとなった表現。
We wish nobody ill.
 我々は誰の不幸も願わない。※ ill には不可算名詞で「不幸、不運、悪いこと」の意味があります。
Wish me luck.
 うまくいくように祈っておくれ。

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