米国とロシアは2021年2月3日、両国の核軍縮条約である新STARTを2026年2月5日まで5年間延長することを発表しました。
新STARTとは
新STARTとは「New Strategic Arms Reduction Treaty」(新戦略兵器削減条約)のことで、2010年に当時のアメリカのオバマ大統領とロシアのメドベージェフ大統領が署名し、2011年2月に発行した条約です。
両国の大型核弾頭や大型核弾頭を搭載する大陸間弾道ミサイル・潜水艦・爆撃機の配備数を制限し、データ交換や現場査察などの検証手段について合意したものです(※)。
※ 新STARTの条約内容については米国務省のU.S. DEPARTMENT of STATE, New START Treatyを参照してください。
ブリンケン国務長官の声明:核兵器の軍備管理を追求
以下は、新STARTの5年間延長を伝えるアントニー・ブリンケン国務長官の声明からの抜粋です。
21世紀の安全保障に取り組む努力の始まり
President Biden has made clear that the New START Treaty extension is only the beginning of our efforts to address 21st century security challenges.
バイデン大統領は、新START条約の延長が21世紀の安全保障の課題に取り組む努力の始まりであることを明らかにしている。
ロシアと共に核兵器の軍備管理を追求
The United States will use the time provided by a five-year extension of the New START Treaty to pursue with the Russian Federation, in consultation with Congress and U.S. allies and partners, arms control that addresses all of its nuclear weapons.
米国は、新STARTの5年間延長によって定められた期間を、連邦議会や同盟国・友好国と相談しながら、ロシアと共に、すべての種類の核兵器の軍備管理を追求するために使う。
中国の核兵器の危険性を緩和する軍備管理を追求
We will also pursue arms control to reduce the dangers from China’s modern and growing nuclear arsenal.
米国はまた、中国の現代化し増大する核兵器の危険性を緩和するための軍備管理を追求する。
安定性、透明性、予見可能性を高める軍備管理
The United States is committed to effective arms control that enhances stability, transparency and predictability while reducing the risks of costly, dangerous arms races.
米国は、コストのかかる危険な軍拡競争のリスクを下げる一方で、安定性、透明性、予見可能性を高める効果的な軍備管理に尽力する。
出典元:U.S. DEPARTMENT of STATE On the Extension of the New START Treaty with the Russian Federation PRESS STATEMENT ANTONY J. BLINKEN, SECRETARY OF STATE FEBRUARY 3, 2021
ということで、ブリンケン国務長官は、米ロ間でのすべての種類の核兵器の管理、核軍備管理の枠組みへの中国の参加、安定的な軍備管理を今後5年間の課題として掲げています。
核兵器の現代化を進める米国
一方で、米国は「今後30年間の核兵器の現代化に向けて少なくとも1兆6千億ドルを充てることになる」(※ PBS NewsHour Feb 3, 2021)としています。こうした方針は、ブリンケン国務長官が声明で述べる世界的に安定的な軍備管理に向けた努力とどう整合性が図られるのか、注目していきたいと思います。
※ 今回の新STARTの延長について取り上げたPBS NewsHourの「U.S. and Russia agree to extend limits on nuclear arms Feb 3, 2021」はこちらからご覧ください。