【アメリカ外交】バイデンの外交姿勢

バイデンの外交姿勢

2021年6月11日の米 PBS NewsHour のデイビッド・ブルックスとジョナサン・ケイプハートによるディスカッションのコーナーでは、G7サミットに参加したバイデン大統領の外交姿勢について意見が交わされました。

議論では、依然として力を持つ「アメリカ・ファースト」の主張や世界におけるナショナリズムの動向に目を配りつつ、バイデン政権の国際的な多国間主義を強調する姿勢を一定評価する主張が展開されました。

また、「世界の指導者から宿泊先のホテルのドアマンまで、誰とでもファーストネームで付き合える」というバイデンの人となりも紹介されました。

2人の議論を聞きながら、また、G7に先立ってバイデン大統領とジョンソン英首相の間で交わされた「新大西洋宣言」とも併せて、バイデン政権の外交姿勢は、自由と民主主義を世界に広げ、その「理想」の実現に向けてはさまざまなジレンマとコストを抱えながらもやり抜きたいという米国の伝統的な「使命感」に支えられているのだなと思ったことでした。

トランプの外交姿勢との違い

これは、2017年1月の大統領就任式でトランプ前大統領が述べた「アメリカはアメリカの生活様式を他の誰かに押し付けようとはしない」と演説したこと、そして、国連総会の演説で国際機構への懐疑や、強く独立した国家の意思・役割の重要性を繰り返し強調したこととは大きな違いがある、とも思いました。

以下、上記の2人の議論の一部を抄訳・抜粋して紹介します。

指導者からホテルのドアマンまでファーストネームで

デイビッド・ブルックス(ニューヨークタイムズのコラムニスト):

  • バイデンは、アメリカが国際社会に戻ってきたことを示す必要があった。
  • 彼は世界の指導者から宿泊先のホテルのドアマンまで、誰とでもファーストネームで付き合える。
  • 国際社会でのそうした付き合い方は、小さなことではあっても、外交の1つともいえる。彼はそうしたことを長い間やってきた。
  • バイデン政権の高官たちは、米国とG7各国の協力により10憶回分のワクチンを調達できたことを誇りに思っている(うち、米国が5億回分)。
  • 高官たちは、アメリカがかつてのマーシャル・プランのような気前の良い仕事に戻ってきたことを示したかった。
  • そして、コロナウイルスに対して国ごとに戦うのではなく、国際社会が相互関係を保ちながら戦うことを強く求めた。それができつつあることを喜んでいる。
  • 高官たちは、米国とヨーロッパの関係が冷戦時代のような密接なものに戻るという幻想は持っていない。そんなことは起こらない。しかし、今回のような関係の再構築には満足している。

スローガンは「America Is Back」

ジョナサン・ケイプハート(ワシントンポストのコラムニスト):

  • 確かにバイデンは、世界のリーダーや彼の政権の高官たちと周知の間柄だ。36年間の上院議員と8年間の副大統領の経験がある。
  • バイデンのスローガンは「America Is Back(アメリカは戻ってきた)」だ。
  • ただ、アメリカ自身の行動は、そのスローガンに見合ったものになっているか。
  • これについては、ヨーロッパは疑いも抱いている。中国への対処に専念し、ヨーロッパは顧みられないのではないか。中国について、報復関税のようなトランプ前政権の政策を継承するのではないか。アフガニスタンからの撤退はトランプ前政権の継承だ。
  • 世界は、アメリカが国際社会に戻ってきたことを歓迎している。しかし、前政権の4年間を考えれば、アメリカに全面的に信頼を寄せることはできないとも考えている。
  • バイデンのもう1つのスローガンは民主主義だ。民主主義が機能していることを示す必要がある。世界のリーダーはアメリカの行動に注目している。各州で黒人などの投票を事実上制限しようとする動きがあるなかで、アメリカは果たして民主主義を主張できるのか。

「アメリカ・ファースト」は弱まっていない

デイビッド・ブルックス:

  • 世界のリーダーは、バイデン政権の4年間が一時的なもので、トランプやトランプのような人物が戻ってくるかどうかと思案している。
  • 米国は安定していないといった認識がある。「アメリカ・ファースト」は弱まっていない。バイデンはトランプほどには打ち出していないが、基本的には「アメリカ・ファースト」の姿勢だ。
  • 世界では今、多国間主義にもとづく協力が強調されなくなっている。こうした動きは、ナショナリズムが欧米やアジアなど世界で影響力を持つにつれて広がっており、ここ25年間の傾向となっている。あらゆる面で協力への意欲が低下している。

高官たちには能力と経験がある

ジョナサン・ケイプハート:

  • こうした状況の中で、世界のリーダーをよく知るバイデンは、そうした人的関係と自らの強みを生かして外交に取り組むことができる。
  • また、バイデン政権の高官たちには能力と経験がある。大変な状況ではあるが、少なくともどこに落とし穴があり、どんな地形(政治・外交の構図)なのかは理解している。

余談ですが、上記の議論の冒頭で、アンカーのジュディ・ウッドロフが、対面での議論が再開されたことをとても喜んでいる姿が印象的でした(コロナウイルス感染症の影響により、このコーナーも長らくリモートで行われていました)

出典元Brooks and Capehart on Biden at the G-7 summit, the Justice Department under Trump Jun 11, 2021 PBS NewsHour

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!