新型コロナウイルスの世界的な感染拡大をめぐるトランプ大統領側近の高官らによる中国への非難に対し、新華社通信（XINHUANET英語版）は2020年4月23日付で次の社説を掲載しています。
The unscrupulous scapegoater of America（アメリカの恥知らずなスケープゴーター）（こちらから）
社説では、アメリカの高官らによる中国とWHOへの非難が「総力をあげてのデマや中傷キャンペーン」であり、新型コロナウイルスの感染拡大を防止できなかった「自らの失敗を隠す」ための「言い訳や嘘」に過ぎないとしています。
新華社通信は中国の国営メディアであることから、こうした見解は、トランプ大統領側近の高官らの言動に対する中国政府の見方を一定反映したものと思われます。
以下、同社説を訳してみます。
※小見出しは私が付けたもので、英語原文にはありません。
社説：アメリカの恥知らずなスケープゴーター
北京、4月23日（新華社）―COVID-19への米連邦政府の対応のまったくの不十分さについてワシントンがまともに責任を認めることは、ほとんど誰もが期待していなかった。だが少数の者は、ワシントンが他の誰かをスケープゴートにすることに必死になるだろうと想像していた。
アメリカの高官たちの責任逃れ
ここ数か月の間に、何人かのアメリカの政治家たち、特に米国務長官のマイク・ポンペオ、ホワイトハウス貿易アドバイザーのピ－ター・ナヴァロ、米上院議員のトム・コットンのような者たちが、別の現実をつくるためのあらゆる種類のごまかしを組み立てるための差し出がましいワークショップを立ち上げてきた。その結果、彼らは責任逃れができるのだ。
ワシントンは新たな製造業の仕事を創造することに本当に前進したようだ。（その仕事というのは）スマートフォンや鉄鋼を製造することではなく、嘘と言い訳の製造だ。
米国を含むWHOとの情報共有を図ってきた
彼らは中国が透明性を欠くと非難する。あたかも、中国が1月初め以来、米国を含む国際社会とともに行ってきた情報や経験の頻繁な共有がまったくなかったかのごとくにだ。
彼らは世界保健機関（WHO）が感染の拡大を隠ぺいしていると非難する。けれども、多くのアメリカの研究者や医療専門家たちがジュネーブ本部でWHOと密接に仕事ををしており、感染の発生以来、リアルタイムなデータをワシントンに送り返している。
米政権のスケープゴート探し
今の（トランプ）政権が3年以上も権力の座にあることを忘れたふりをしながら、彼らは前政権が米国の感染拡大への対応能力を衰えさせたと非難している。
彼らからすれば、ヨーロッパもまた責めを負っており、その（責めを負う）リストは続くことになりそうだ。ポンペオとナヴァロはスケープゴートを探すためにあらゆる手段を使い、非難が現政権に降りかからないよう念を入れているようだ。
米政権の初期対応の遅れ
もちろん、そのような神経のずぶとい政治家たちは愚かではない。彼らが今回、懸命になって嘘をつくには一連の理由がある。
その直接の理由は、初期の段階で感染の発生を封じ込めることに大失敗したことにある。その結果として、米国は世界のパンデミックの中心となり、その経済的リスクは、彼らの眼前で深刻な景気後退となって跳ね返ってきた。
国立アレルギー・感染症研究所所長のアンソニー・ファウチ博士はかつてCNNとのインタビューで、ソーシャルディスタンスによる対策や他の緩和戦略が早くに実施されていたならば、米国は「明らかに」命を救うことができたはずだと認めた。
中国との対立をあおる
一方、7か月を切った（大統領）選挙日を控え、パンデミックは、ホワイトハウスを維持するか奪うかの激しい政治的競争の領域へと移り変わった。
さらに、そのようなホワイトハウスのタカ派のゼロサマー（あくまでも勝者であることを求める人）たちの目には、感染拡大は、アメリカの「戦略的ライバル」であり覇権への脅威とレッテルを貼っってきた中国とのさらなる問題をつくる機会であると映っている。
中国やその他のスケープゴートに対する総力をあげてのデマと中傷キャンペーンは、そうしたワシントンの政治家たちの醜い心をまたしても明らかにしている。それはまた、どんな言い訳や嘘も自らの失敗を隠すに十分な大きさではないことを示している。
米国は他国や国際組織と協力すべき
スケープゴートを探すために時間を無駄に使うよりも、むしろ、致命的な病原菌を打ち負かす効果的な方法を探すために、米国は他国や国際組織と手を取り合うべきだ。
協力こそが狡猾なコロナウイルスを前にしての唯一の対処法である。世界が安全になる時にのみ、アメリカは本当に安全になることができる。
出典：Opinion:The unscrupulous scapegoater of America
Source: Xinhua 2020-04-23 Editor:huaxia
by Xinhua writer Jiang Li
