トランプ政権の対中国政策の主要な政策立案者の1人とされ、ポンペオ国務長官の主席アドバイザーであるマイルズ・ユー(Miles Yu)氏の経歴や考え方について、ワシントン・タイムズが下記の記事を掲載しています。
From Mao’s China to Foggy Bottom: Miles Yu a key player in new approach to Beijing(毛沢東の中国から米国務省へ:マイルズ・ユー、北京への新たなアプローチのキープレーヤー)By Bill Gertz – The Washington Times – Monday, June 15, 2020
記事を読むと、歴代の米政権には見られないトランプ政権による中国に対する強硬な姿勢や、米中対立に大きなインパクトを与えたペンス副大統領の2018年10月の演説の背後にユー氏の存在があることが理解できるように思います。
以下、記事から、ユー氏の略歴と人となり、そして米国の中国理解・中国政策についての彼の考え方が読み取れる部分を紹介してみたいと思います。
ユー氏の略歴と人となり
● 現在57歳のユー氏は中国生まれで、その少年時代は毛沢東の文化大革命期に重なる。
● 中国の大学に進学し、そこでアメリカ人の教授の講義に触れ、Voice of Americaを通じて密かにレーガン大統領の演説を聞き、アメリカへの関心を高めた。
● 1985年に渡米。カリフォルニア州立大学バークレー校で博士号取得。在学中は中国の民主化運動を支持し、1989年の天安門事件の際には、中国からの避難者がサンフランシスコのベイエリアに落ち着くのを手伝った。
● 1994年、ユー氏は米海軍兵学校の教授となり、以来、中国史と軍事史を指導してきた。
● ユー氏はこの3年間、トランプ政権による中国政策の再構築の強力な影の立役者であった。ユー氏は中国に対する新たなアプローチを「理にかなったリアリズム(principled realism)」と呼ぶ。
● ポンペオ国務長官はユー氏を「中国共産党からの挑戦に対してアメリカ国民と自由を守るために私に助言するチームの要である」と称賛している。
● また、東アジア・太平洋担当国務次官補のスティルウエル氏は、ユー氏は米国の方針と中国の方針について学術的な面と政策の実行者としての面における多くの知識を持ち合わせていると述べている。
中国理解・中国政策に関して
● 米国の中国理解・中国政策に関する失敗の1つは、トランプ政権以前の政権が、中国に対するいくつかの主要な政策において考え方を誤ったことだ。
● 1970年代に北京との関係を開いて以来、その関係を方向づけるうえでワシントンは自信過剰であった。
● 冷戦期の米国の政策立案者たちは、中国と接近するチャイナ・カードの戦略がソ連を弱めると考えた。しかし実際は、中国が自国の利益を得てアメリカの利益に対抗するためにアメリカ・カードを享受していた。
● 2つ目の失敗は、中国国民と支配的な中国共産党のエリートたちの間の区別を明確にしてこなかったことだ。
● 資本主義の中産階級的なライフスタイルを熱心に求める今日の中国国民は、共産主義のイデオロギーに対し政治的にますます冷淡になっている。
● 米国の政治的・文化的エリートたちは、マルクス・レーニン主義による厳格で教条的な中国共産党の幹部たちと、中国の国民とを混同してきた。中国国民と中国共産党が支配する政体との区別ができていない。
● 3つ目の失敗は、北京の弱点とぜい弱さを適切に判断できず、したがって健全な政策を取れなかった米国の政治的・政策的エリートたちの失敗である。
● 米国は意思に反して中国の虚勢に屈してきた。対中国政策は、何がアメリカの国益に最も良く適しているかではなく、中国の怒りをマネジメントすることに基づき実行されていた。
● こうした米国のアプローチは、米国がいかに反応するかを確認するためにまずは最大限の怒りを発する中国の戦術に対し、米国側が誤った理解をした結果として生じたものだ。
● 米国は頻繁に中国共産党の詭弁にはまった。激怒しているかに見える中国共産党との想像上の誇張された直接対立を避けるため、米国は中国共産党の過敏性や偽りの怒りを融和する政策をとってきた。
● そのことにより、米国は独裁主義に対して自分たちが持っているはずの評判や現実に関するはかり知れない優位性と影響力を実現することができなかった。
● 中国の政権はその核においてぜい弱で弱い。自国民を恐れ、西側、特に米国との衝突にとりわけ被害妄想的である。