【アメリカ外交】中国問題の要点-トランプ政権のレガシーとなるか?

米国務省の政策策定スタッフによって書かれたThe Elements of the China Challenge(中国問題の要点)と題するレポートが2020年11月20日に公表されました。

トランプ政権の対中政策の立案者の1人でポンペオ国務長官のアドバイザーであるマイルズ・ユー氏が当然関与していることと思われます(こちらを参照)。

対中政策におけるトランプ政権からバイデン次期政権へのレガシーとしての意味合いもあるのかもしれません。

レポートは、本文だけで50ページに及ぶ長文ですが、冒頭にエグゼクティブサマリーがあります(といっても3ページの長いサマリーです)。

すべてを紹介することはできませんが、今後の参照の手がかりとなるよう、ポイントとなる部分をエグゼクティブサマリーの中から抜き出しておこうと思います。

中国問題の要点(エグゼクティブサマリーから)

新たな大国間競争

… the Chinese Communist Party (CCP) has triggered a new era of great-power competition.
… 中国共産党(CCP)は新しい大国間競争の時代をもたらした。

世界秩序の再編をめざす中国

The CCP aims … to fundamentally revise world order, placing the People’s Republic of China (PRC) at the center and serving Beijing’s authoritarian goals and hegemonic ambitions.
中国共産党は…中華人民共和国(PRC)を中心におき、北京の権威主義の確立と覇権の野望にかなうよう、世界秩序を根本的に変えようとしている。

独裁体制と経済力を用いた行動

China is a challenge because of its conduct. Modeled on 20th-century Marxist-Leninist dictatorship, the CCP eventually spurred rapid modernization and produced prodigious economic growth …
中国はその行動がゆえに問題である。20世紀のマルクス・レーニン主義の独裁体制をモデルとして、中国共産党は、ついには急速な近代化を促進させ、巨大な経済成長をつくり出した …

The party today wields its economic power to co-opt and coerce countries around the world; make the societies and politics of foreign nations more accommodating to CCP specifications; and reshape international organizations in line with China’s brand of socialism.
中国共産党は今日、その経済力を用いて世界の国々を引き入れ、威圧し、外国の社会や政治を中国共産党の様式に適合させようとし、国際組織を中国型の社会主義に沿って再編しようとしている。

軍隊の強化と中国国家の再興

At the same time, the CCP is developing a world-class military to rival and eventually surpass the U.S. military.
同時に、中国共産党は米国の軍隊と競い、追い越すために、世界クラスの軍隊を持とうとしている。

These actions enable the CCP to credibly pursue the quest — proceeding outward through the Indo-Pacific region and encompassing the globe — to achieve “national rejuvenation” culminating in the transformation of the international order.
これらの行動により、中国はインド太平洋地域を通り越し、世界を包含することによって、国際秩序の転換の集大成としての「国家再興」を達成する道を確かに追求している。

中国がばねとする知的な源泉

To understand China’s peculiar form of authoritarianism and the hegemonic goals to which it gives rise, it is necessary to grasp the intellectual sources from which China’s conduct springs: the CCP’s Marxist-Leninist beliefs and the party’s extreme interpretation of Chinese nationalism.
中国の特異な権威主義の形態とそれがもたらす覇権の野望を理解するためには、中国の行動がばねとする知的な源泉を理解することが必要であり、それは、中国共産党のマルクス・レーニン主義の思想であり、同党の中国の愛国心についての極端な解釈である。

米国がとるべき10の課題

Meeting the China challenge requires the United States to return to the fundamentals. To secure freedom, America must refashion its foreign policy in light of ten tasks.
中国問題に対応するために、米国は基本に立ち返ることが必要だ。自由を守るために、アメリカは10項目の課題に照らして外交政策を作り直さなければならない。

1. 国内の自由を守る

First, the United States must secure freedom at home …
第1に、米国は国内において自由を守らなければならない …

2. 世界でも最も強力な軍隊の保持

Second, the United States must maintain the world’s most powerful, agile, and technologically sophisticated military …
第2に、米国は世界で最も強力で、機動性があり、技術的に洗練された軍隊を維持しなければならない …

3. 自由で開かれたルールに基づく国際秩序の構築

Third, the United States must fortify the free, open, and rules-based international order …
第3に、米国は自由で開かれた、ルールに基づく国際秩序を築かなければならない …

4. 同盟システムと国際組織の査定

Fourth, the United States must reevaluate its alliance system and the panoply of international organizations …
第4に、米国は同盟システムと多くの国際組織について査定し直さなければならない …

5. 責任の共有による同盟の強化

Fifth, the United States must strengthen its alliance system by more effectively sharing responsibilities …
第5に、米国は責任を効果的に共有することにより、同盟システムを強化しなければならない …

6. 中国との公正と互恵主義に基づく協力

Sixth, the United States must promote American interests by looking for opportunities to cooperate with Beijing subject to norms of fairness and reciprocity, …
第6に、米国は公正と互恵主義の規範を条件とした北京との協力の機会を探ることにより、アメリカの国益を促進しなければならない …

7. 中国問題についてのアメリカ市民の教育

Seventh, the United States must educate American citizens about the scope and implications of the China challenge …
第7に、米国は中国問題の大きさとその意味するところについて、アメリカ市民を教育しなければならない …

8. 新たな世代の公僕と政策立案者の育成

Eighth, the United States must train a new generation of public servants … and public policy thinkers …
第8に、米国は公僕と政策立案者の新たな世代を育てなければならない …

9. 若者の市民性と責任を育成するための教育改革

Ninth, the United States must reform American education, equipping students to shoulder the enduring responsibilities of citizenship in a free and democratic society …
第9に、米国は学生が自由で民主的な社会における市民の永続的な責任を担うことを身に付けられるよう、アメリカの教育を改革しなければならない …

10. 自由の原理の擁護

Tenth, the United States must champion the principles of freedom …
第10に、米国は自由の原理を擁護しなければならない …

ということで、上記サマリーの冒頭に出てくる「大国間競争」という用語はトランプ政権の対中国政策のキーワード的な位置づけになっています。

上記の引用ではサマリーの多くの部分を省略しているため感じがつかみにくいかもしれませんが、読み進めていると、旧ソ連の封じ込め政策に関わるジョージ・ケナンの論考を思い出したりしました。

トランプ政権は残すところ2か月を切りました。バイデン政権や連邦議会の対中国政策はこのレポートをレガシーとして引き継いでいくことになるのでしょうか。

出典:The Elements of the China Challenge by The Policy Planning Staff, Office of the Secretary of State November 2020

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